ベイビーティース

ベイビーティース “Babyteeth”

監督:シャノン・マーフィ

出演:エリザ・スカンレン、トビー・ウォレス、
   エシー・デイヴィス、ベン・メンデルソーン、
   エミリー・バークレイ、ユージーン・ギルフェッダー

評価:★★★




 難病に苦しむ者が誰かと出会い、絶望一色だった人生に光が射す。映画の世界ではやたら耳にする話だ。特に病人が少年少女である場合が多い。泣かせの沼に足を取られる作品は後を絶たず、だから『ベイビーティース』にも警戒せざるを得ない。

 どう考えても助かりそうにない少女は、初っ端から大いに暗い。その表情は人生に楽しいことなど何もない、未来なんてどこにあると叫んでいる。加えてそんな彼女が出会う年上少年(本当は青年と呼ぶ方が適した年齢)は、見るからに不健康なジャンキーなのだ。怖えぇぇぇ。

 キャラクターを立たせることに成功した。これが勝利の要因だ。衝動的に髪をモンチッチ風に切ってしまうヒロイン少女や、優しいけれど情緒不安定、時に道徳から外れる父と母もさることながら、やっぱりジャンキー少年が強烈だ。身体中に見えるタトゥー。焦点が定まらない細い目。ダッセー後ろ髪。犯罪行為にも簡単に手を染める彼にトビー・ウォレスは、どこか信用できないまま、血を通わせる。

 すると少女を演じるエリザ・スカンレンが輝き出す。病のせいだろう、その進行以外彼女の人生をざわつかせるものがなかったのに、少年のぶっ飛んだ行動に振り回されるうちに、或いは自ら進んで振り回されに行くうちに、「生」の実感を獲得する。スカンレンはエメラルドグリーンのウィッグとドレスを身に着けたとき、とても可愛い。

 ただ、これだけでは既存類似映画と大差ない。そこで物を言うのが、シャノン・マーフィの演出だ。エピソード毎にタイトルがつけられる。エピソードは言わば、装飾のない大きいメモ用紙だ。マーフィはそこに弱さを隠さない人間たちの実態を次々書き込む。そしてそれをコルクのボードに並べていく。並べたものがそのまま物語になる。したがって、エピソードとエピソードの繋ぎには、あってしかるべきことがない場合がある。突然の展開は不完全な継ぎ接ぎを思い起こす。

 しかし、それがマイナスにならない。マーフィはキャラクターを信頼し、観客を信頼し、だから詳細な説明よりも詩情を優先した余白を大切にしたということだ。例えば終幕、ある哀しい出来事があった後、少女の母親が少年を詰る場面がある。これなんてキャラクターや観客への信頼なくして絶対に成立しない掛け合いだ。文言をそのまま受け取られる危険があると承知し、けれどそうはならないと賭けた。淡くもヴィヴィッドなカラーが占める画面。少年少女の内面を映し出す音楽。生々しく聞こえるダイアログ。マーフィの計算は隅々まで行き届いている。





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