ブリス たどり着く世界

ブリス たどり着く世界 “Bliss”

監督:マイク・ケイヒル

出演:オーウェン・ウィルソン、サルマ・ハエック、
   ネスタ・クーパー、ホルヘ・レンデボルグ・ジュニア、
   マデリン・ジーマ、ジョシュア・レナード

評価:★★




 今思えば同じマイク・ケイヒル監督作「アナザー プラネット」(11年)も、映画全体が鬱状態にあるような映画だった。鬱と言ってもどんよりじめじめした印象は少なく、恐れずに言うならば、むしろ魅力的に描き出していた。もしかしたらこれは、ケイヒル映画の特徴なのかもしれない。『ブリス たどり着く世界』もまた、鬱状態の彷徨が映画の底に敷かれている気がする。

 主人公を演じるオーウェン・ウィルソンの人生は離婚され解雇されとどん底状態。初っ端から生気がなく、それだからホームレスの女サルマ・ハエックに目をつけられる。ハエックは言う。この世の中は人工的に作られたもの。本物は外にある。ハエックが新興宗教にハマる女にも、黄色いドラッグでトリップしている女にも、スーパー能力を持った超人にも見える。ウィルソンがハエックとの出会いをきっかけに鬱を癒していく展開。

 仮想世界という言葉が出てきて、あぁ、「マトリックス」(99年)のようなものか、「エージェント・オブ・シールド」(13年~)にも似たようなシリーズがあったなぁ、と気づいたり思い出したり…。最初独創的に思えた世界観はしかし、すると急速に褪せていく。でもまだ、仮想世界を借りて鬱状態のセラピーを行う、そこに勝利の秘策があるのではないかと期待する。

 本物の世界として紹介される日常が眩しい。つまり仮想世界はわざわざ醜悪なそれとして存在するわけで、何故わざわざそんなところに出向くのかというと、「現実世界の幸せを感じるため」と言うではないか。このあたりから「幸せとは何か」という哲学的な気配が浮上し始める。明るくて、便利で、ゴージャスで、空気は澄んで、安全で、好きなことができて…。でも何かが足りないというのがケイヒルの見方だ。

 それを表現するための装置は、さほど効果的に働かない。小難しいセリフの応酬でそれらしく見せるものの、仮想世界のウィルソンの娘と息子を投入してそれを炙り出す作法が弱いし、トリッキーな世界観を追求するのも、もしかしたら現実世界に思われた方がフェイクのそれなのではないかと邪推してしまうのが余計な作業になる。「トゥルーマン・ショー」(98年)の逆ヴァージョン的落としどころが窮屈に感じられる。

 ケイヒルは現実世界と仮想世界、ふたつを用意してどちらが良いのか、問い掛けているみたいだ。もちろんケイヒルには自身の解答があるはずだけれど、大半の意見は「どっちが良い」ではなく「どっちも嫌」なのではないか。心の機微に触れるのを目指しながら、案外説明的な物語の流れが味気ない。ウィルソンの最後の選択に中途半端さを感じるのはそういうわけだ。





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