チェイシング 追跡

チェイシング 追跡 “Tenderness”

監督:ジョン・ポルソン

出演:ラッセル・クロウ、ジョン・フォスター、ソフィー・トラウブ、
   ローラ・ダーン、アレクシス・ジーナ、アリヤ・バレイキス

価:★★




 十代の頃を定義するのは難しい。光GENJIじゃないけれど、硝子のように繊細で脆い。大人でも子どもでもない、中途半端な成長過程にあり、それゆえ精神状態も安定しているとは言い難い。どこに向かっているのかも、何を見つめているのかも、一体自分がどうしたいのかも、はっきりとは分からない。空に浮かぶ雲と同じで、ふわふわ宙に浮いているような、そして風に吹かれたらそのまま消えてしまいそうな。こういう状態を描かせると上手いのがガス・ヴァン・サント監督で、「エレファント」(03年)や「パラノイドパーク」(07年)は最たるものだ。『チェイシング 追跡』のジョン・ポルソン監督も、同じセンを狙ったのではないかと思う。最初は。

 中心となるのは、ある事件を起こして少年院に入っていた若者と家庭に事情を抱えた少女だ。少年は殺人衝動を抱えている。少女は母親の新しい男との関係に苦しんでいる。少女の大胆な決断により一緒に行動することになったふたりの、心象とその距離感が映画の軸になっている。彼らの行動は頭で理解しようと思ってもできるものではない。むしろ首を傾げる。ほとんど面識のない男の車に勝手に乗り込んだり、それを受け入れてドライブしたり、身体を休めるためにモーテルに泊まったり…。ただ、互いの中に孤独に似た、でもそれだけではない何かを嗅ぎ取っていることが伝わってくる。

 演じるジョン・フォスターとソフィー・トラウブが好演している。フォスターは体躯に恵まれ容姿も美しいのだけれど、ふとした瞬間に見える狂気が、兄のベン・フォスターに通じるものがある。やや大味に感じられるところもあるものの、その脆さ、危うさに嘘臭さはない。しかし、もっと冴えているのはトラウブの方で、愚かさにも通じる純粋さを見事に捉えている。フォスターもトラウブに引っ張られる形で輝き始める。フォスターとトラウブを見ていると、彼らの境遇とは全く違ってはいても、どこか郷愁を誘われるところがある。フラッシュバックの入れ方も的確だ。

 ポルソンはこうした若い魂を揺らめかせながら、しかし、そこに娯楽映画的な演出を持ち込んでしまった。魂だけを掬い取るのではなく、欲張って物語性を注ぎ込んでしまった。分かりやすい音楽の使い方にも落胆するけれど、それよりも少年に疑念を抱く刑事を登場させたのが問題だ。刑事は少年が裁かれた以外にも事件を起こしていると睨む。そして出所後、再び同じような事件を起こすのではないかと信じる。それゆえ少年と彼に同行する少女を追い始める。追跡劇のような仰々しさはないものの、刑事が仕掛けるトラップの存在もあり、簡単に少年少女を説明し過ぎてしまった嫌いはある。

 例えば刑事は少年について「純粋な殺人に対する欲求」を抱えていると話す。全くもって、不要な言葉だ。勝手に枠の中に当てハメてしまい、かえってその気配を感じ難くしている。しかも刑事をラッセル・クロウが演じる。クロウは抑えに抑えた演技を選んでいるものの、やはりどこか物語のバランスが崩れている。必要以上に刑事の存在が重たい。大人との対比が上手く機能していない。

 結末も安易さが拭えない気がした。ハッピーエンドでないことは予想していたものの、説教臭いのはどうか。掴み所のない題材を無理に形にしたような、違和感を感じた。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ