あの夜、マイアミで

あの夜、マイアミで “One Night in Miami”

監督:レジーナ・キング

出演:キングズリー・ベン=アディル、イーライ・ゴリー、
   オルディス・ホッジ、レスリー・オドム・ジュニア

評価:★★★




 活動家マルコムXが、ボクサー カシアス・クレイ(後のモハメド・アリ)が、NFLスター ジム・ブラウンが、そしてソウルシンガー サム・クックが一堂に会する。歴史に名を残す彼らが集まるからと言って、しかし『あの夜、マイアミで』は華やかさの追求に微塵も興味を示さない。原作はケンプ・パワーズの舞台劇。1964年2月25日、名声を得ていたレジェンドたちも、根強く残る黒人差別からは逃れられない。

 この夜はボクサーのクレイがヘビー級世界王者となったばかりだ。それを祝おうと4人が向かうのはマルコムXが宿泊するモーテル、とても有名人が出入りしそうにない寂しさだ。クレイの祝いの場は和やかな雰囲気に包まれるも、やっぱりか、次第に4人が置かれている社会的立場が浮き彫りになる。彼らは同じ黒人で、けれどだからと言って、同じ立場にはいない。その難しさが炙り出されるのだ。

 マルコムはイスラム教徒で、クレイも改宗、NOIへの加入も決めたばかりだ。年齢差も大きく、マルコムは38歳、クレイは22歳だ。言葉にすると簡単に思えるものの、その違いが彼らの立ち位置を大きく揺るがせる。暗殺が刻一刻と迫るマルコムは既に精神状態がギリギリのところにいる。人格者で、けれど黒人を過激に率いる現状に雁字搦めになっている。黒人たちは、置かれた立場で必死に戦う。

 …とその流れで出てくる、ブラウンの言葉に衝撃を受ける。ブラウンは言う。「肌の色の薄い奴らが過激になるのが不思議だ」。そんなところまで違いが出てくるのか。そうして、会話の先には白人たちの偽善が見えてくる。なるほど、黒人たちが「グリーンブック」(18年)を批判するのは当然だ。

 議論が最も白熱するのはマルコムとクックの対決だろう。マルコムが名声を使って立ち上がらないクックを挑発、場は剣呑な空気に包まれる。誰もがマルコムXにはなれない。何でも白黒つけられるわけがない。マルコムの危うさはクックを「君はオルゴールの中で踊る猿だ」と言ってのけるところにまで到達する。この際、クレイとブラウンがクッションになるのは、「パワー」という大きなテーマに隠れがちな「友情」という小さなそれの表れに見えて微笑ましい。

 レジーナ・キングはこれが長編監督デビューだ。舞台劇が原作だということは聞かされていなくても分かるのではあるけれど、それに鼻白むほどの臭さはない。基本はモーテルの一室で展開する話ながら、人物を巧みに出し入れし、モーテルの外や屋上に彼らを連れ出して抑揚をつける。人物に寄り過ぎない撮影は、構図にも大いに気を配る。それにレジェンドたちを演じるスターたちの掛け合いのバランス感覚が大いに冴える。誰が主役というのではない。誰もが主役であり、彼らの背後には無数の黒人たちの姿が見える。キングが見据える本当の闘いはそこにあることに気づいているのだ。





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