ヴァスト・オブ・ナイト

ヴァスト・オブ・ナイト “The Vast of Night”

監督:アンドリュー・パターソン

出演:シエラ・マコーミック、ジェイク・ホロウィッツ、ゲイル・クロナウアー

評価:★★★




 主人公のひとりがディスクジョッキー(DJ)だからというわけではないけれど、『ヴァスト・オブ・ナイト』はラジオドラマを思わせるところがある。映画的な画を連発して持たせるタイプの作品ではない。怒涛のセリフの数々と、それと連動するシンプルな画により、その世界観を確かな手触りのあるそれへと導いていく。

 ニューメキシコの田舎町、バスケットボールの試合のため町の人々の大半が一カ所に集まる夜、DJの青年と電話交換手の女子高生が謎の周波数をキャッチする…というとっかかりから発展していくのは、それについて知っている者のインタヴュー2本と、クライマックスの「遭遇」ぐらい。90分と短いとは言え、いかにも頼りない材料、そして完成品に思える。

 だけれどしかし、ガッツのある人は諦めない。アンドリュー・パターソンは、ならば魅せ方で勝負しようと気合十分。ただし、金はないから、画面の隅々まで気を配らなくては。セリフの応酬により人物の紹介が効率良くなされ、長回しの多用で独特のリズムを作る。役者の顔のアップとその語りで恐怖を浮上させ、リアルタイム進行を思わせる語り口で緊張感を高めていく。

 とりわけ撮影は奮闘する。話は夜の出来事。空に何かがいる。そしてその何かの正体は多くの人が想像する通りだ。当然闇が多くなる。1950年という時代設定ならではの空間は、見えないところに何かが見えてくるのがミソ。照明と時代の匂いが夜の田舎町の異変をじわじわと切り取っていく。何も起こっていないようで何かが起こっている、この気配を掴まえる撮影だ。

 おそらく参考にしたのは往年のミステリーシリーズ「トワイライト・ゾーン」(59~64年)だ。ブラウン管越しに伝えられる謎めいた物語は、スティーヴン・スピルバーグが撮るような映画的な場面は一切ない。けれど、だからこそもしかしたら本当の出来事かもしれないと信じてしまいそうな、まるで己の知り合いが話しているような匂いを発散する。それが低予算の作りと共鳴する。

 クライマックス、空に何かがいるのに、頑なに空を映さなかった画が、遂に空を見上げる。はっきりとした答えは出なくとも、その後の主人公ふたりの行く末が想像できる。とりわけ老婦人の話が思い起こされる。これから聞いたことのない音を耳にしたとき、ちょっと緊張してしまいそうな、それこそが映画の成功を物語る。





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