シルヴィ 恋のメロディ
シルヴィ 恋のメロディ “Sylvie's Love”
監督:ユージーン・アッシュ
出演:テッサ・トンプソン、ナムディ・アサマア、アヤ・ナオミ・キング、
ライアン・ミシェル・ベイズ、レゲ・ジャン=ペイジ、エヴァ・ロンゴリア、
ジョン・マガロ、エド・ウィークス、アラーノ・ミラー
評価:★★★
音楽好きなら主役カップルの出会いの場面に心躍るはずだ。女がレコードショップの娘で、男が売り出し中のサックス奏者。音楽を通じて心を通わせていくふたりは、男のライヴ場面で一気に恋を燃え上がらせる。男の演奏に女の目には涙が浮かぶ。ライヴ後「Tears on My Pillow」でダンス、別れ際にキスって、初デートで完璧じゃないか。
監督:ユージーン・アッシュ
出演:テッサ・トンプソン、ナムディ・アサマア、アヤ・ナオミ・キング、
ライアン・ミシェル・ベイズ、レゲ・ジャン=ペイジ、エヴァ・ロンゴリア、
ジョン・マガロ、エド・ウィークス、アラーノ・ミラー
評価:★★★
音楽好きなら主役カップルの出会いの場面に心躍るはずだ。女がレコードショップの娘で、男が売り出し中のサックス奏者。音楽を通じて心を通わせていくふたりは、男のライヴ場面で一気に恋を燃え上がらせる。男の演奏に女の目には涙が浮かぶ。ライヴ後「Tears on My Pillow」でダンス、別れ際にキスって、初デートで完璧じゃないか。
『シルヴィ 恋のメロディ』は何と言っても、ヒロイン、テッサ・トンプソンが良い。思い切ったキノコ風ショートカットで登場する序盤から、可愛らしい個性を前面に押し出す。男を演じるナムディ・アサマアは全編に渡ってやや硬さが残るものの、トンプソンと一緒の場面になると途端に生き生きする。ふたりの関係にはちょっと「ロミオとジュリエット」を思わせるところがある。
ロマンスの中でいちばんの見ものになるのは、トンプソンが変身していくところだ。まだ小娘だったトンプソンはしかし、大好きなテレビの世界に入り込むことに成功、そればかりか重要なポジションを獲得するまでになる。1957年から始まる物語。この時代、黒人、それも女が働く意味を考えると、かなりの幸運に恵まれる。苦労人の黒人の映画ばかり見せられる昨今、大いに貴重だ。トンプソンが洗練されていく様は、無論、カッコイイ。
夢のためにその後別れたふたりの再会の最大の障害となるのは、トンプソンの夫の存在だ。家事を疎かにしないのが働く条件と言い切る夫は、基本良い人。けれど、仕事への無理解がトンプソンの向上心を傷つける。この描き方は若干首を傾げるところ。女は家庭に入るべきだとする考えは、当時としてはさほど珍しくなかっただろう。それを離婚の原因として押し出すのは、ヒロインにあまりに都合良いのではないか。
再接近するトンプソンとアサマアの関係は「スタア誕生」(37年他)を思わせる。ビジネスウーマンとしてますます輝くトンプソンとサックス奏者として落ちぶれていくアサマア。切ないのはふたりを結びつけた音楽が、今度は彼らの壁として立ち上がる点だ。思いやりも恋路を邪魔する。分かっていても心揺さぶられるのは、いつの時代もこの展開が愛される証かもしれない。
さて、「スタア誕生」では男の側に取り返しのつかない悲劇が起こるのだけれど、さすがにそこまではなぞらない。ただ、それに取って代わって用意された結末は、問題の単純化ではないか。何の解決にもなっていない安易さがあるし、甘ったるくも感じられる。従姉妹や上司といった周辺人物が使い捨てにされることなく描写されていく気遣いがあるので、余計に結末だけが乱暴に映る。まあ、変にシリアスになるより良いか。

ロマンスの中でいちばんの見ものになるのは、トンプソンが変身していくところだ。まだ小娘だったトンプソンはしかし、大好きなテレビの世界に入り込むことに成功、そればかりか重要なポジションを獲得するまでになる。1957年から始まる物語。この時代、黒人、それも女が働く意味を考えると、かなりの幸運に恵まれる。苦労人の黒人の映画ばかり見せられる昨今、大いに貴重だ。トンプソンが洗練されていく様は、無論、カッコイイ。
夢のためにその後別れたふたりの再会の最大の障害となるのは、トンプソンの夫の存在だ。家事を疎かにしないのが働く条件と言い切る夫は、基本良い人。けれど、仕事への無理解がトンプソンの向上心を傷つける。この描き方は若干首を傾げるところ。女は家庭に入るべきだとする考えは、当時としてはさほど珍しくなかっただろう。それを離婚の原因として押し出すのは、ヒロインにあまりに都合良いのではないか。
再接近するトンプソンとアサマアの関係は「スタア誕生」(37年他)を思わせる。ビジネスウーマンとしてますます輝くトンプソンとサックス奏者として落ちぶれていくアサマア。切ないのはふたりを結びつけた音楽が、今度は彼らの壁として立ち上がる点だ。思いやりも恋路を邪魔する。分かっていても心揺さぶられるのは、いつの時代もこの展開が愛される証かもしれない。
さて、「スタア誕生」では男の側に取り返しのつかない悲劇が起こるのだけれど、さすがにそこまではなぞらない。ただ、それに取って代わって用意された結末は、問題の単純化ではないか。何の解決にもなっていない安易さがあるし、甘ったるくも感じられる。従姉妹や上司といった周辺人物が使い捨てにされることなく描写されていく気遣いがあるので、余計に結末だけが乱暴に映る。まあ、変にシリアスになるより良いか。
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