BEST 2020

2020年 BEST10


1. ミッドサマー “Midsommar”
 監督:アリ・アスター
 出演:フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー
 スウェーデンの田舎町でアスター映画の特徴、恐怖と不快さが合体。生々しくも惹かれてしまう、明るい中に浮かぶ闇よ。

2. ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー “Booksmart”
 監督:オリヴィア・ワイルド
 出演:ケイトリン・デヴァー、ビーニー・フェルドスタイン
 強気の姿勢を守る少女ふたり、さすがふざけ方に芸がある。冷淡に見えた周囲の個性がくっきり。これぞ青春!

3. ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ “The Last Black Man in San Francisco”
 監督:ジョー・タルボット
 出演:ジミー・フェイルズ、ジョナサン・メジャース
 街の移ろいに複雑な思いを抱く作り手が、その宙ぶらりんの心象に詩情を見つける。「本当の家」にしみじみ…。

4. シカゴ7裁判 “The Trial of the Chicago 7”
 監督:アーロン・ソーキン
 出演:エディ・レッドメイン、サシャ・バロン・コーエン、マーク・ライランス
 堅苦しく動きが制限されそうな裁判劇を一級の娯楽に昇華させる映画人たちの技に唸る。とりわけ編集に惚れ惚れ。

5. ナイチンゲール “The Nightingale”
 監督:ジェニファー・ケント
 出演:アイスリング・フランシオシ、サム・クラフリン
 女と男の心を惑わし、しかし同時に癒してもいく森の中、様々な暴力が溢れる。旅の終着点でその苛烈さと優しさを思う。

6. 燃ゆる女の肖像 “Portrait de la jeune fille en feu”
 監督:セリーヌ・シアマ
 出演:ノエミ・メルラン、アデル・エネル
 哀しみを纏った話だが、エレガントな映画の技が次々炸裂、充実の水で満たされる。女たちの肌の温度が生々しい。

7. ザ・ファイブ・ブラッズ “Da 5 Bloods”
 監督:スパイク・リー
 出演:デルロイ・リンドー、ジョナサン・メジャース、クラーク・ピーターズ
 先人たちの戦いに敬意を表し、その犠牲者たちに花を手向け、今の己にできることが何なのかを掲げる、リーの熱よ。

8. ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密 “Knives Out”
 監督:ライアン・ジョンソン
 出演:ダニエル・クレイグ、アナ・デ・アルマス、クリス・エヴァンス
 「物的証拠が真実とは限らない。そして人は嘘をつく」というミステリーの定石に希望を絡ませ、人間の面白さを炙り出す妙。

9. 透明人間 “The Invisible Man”
 監督:リー・ワネル
 出演:エリザベス・モス、オルディス・ホッジ
 監視社会のホラー化が上手く機能。#MeToo時代、女をナメんなよ!的展開以上の妖気が充満する画面に酔う。

10. ホワイト・ボイス “Sorry to Bother You”
 監督:ブーツ・ライリー
 出演:ラキース・スタンフィールド、テッサ・トンプソン、アーミー・ハマー
 何度も脱皮を繰り返しては映画の表情が次々変化。しかも、変態後の姿にいちいちパンチあり。頭を柔らかくする。

次点. 40歳の解釈:ラダの場合 “The Forty-Year-Old Version”
 監督・出演:ラダ・ブランク
 出演:オズウィン・ベンジャミン、ピーター・キム、イマニ・ルイス
 苦手な自分探しがテーマだが、貧困ポルノを嫌う黒人作家らしい物語が痛快。ヒロインの造形が抜群に冴える。

次々点. ワイルド・ローズ “Wild Rose”
 監督:トム・ハーパー
 出演:ジェシー・バックリー、ジュリー・ウォルターズ、ソフィー・オコネドー
 愚かさの向こうに無邪気さが、汚い言葉や切ない涙の後ろに音楽への愛がちらつく。本物のヴァイタリティを見る。

Special Mention. パラサイト 半地下の家族 “Gisaengchung”
 監督:ポン・ジュノ
 出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク
 格差社会を題材に想像力と創造力の翼が大きく広がっていく快感。空間設計の巧みはもはや芸術を超えた。



■その他のBEST10選考作品
『アンカット・ダイヤモンド』『ハスラーズ』『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』『1917 命をかけた伝令』『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』『ブリタニー・ランズ・ア・マラソン』『ペイン・アンド・グローリー』『mid90s ミッドナインティーズ』『マ・レイニーのブラックボトム』『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』『アイム・ユア・ウーマン』『フランクおじさん』



◆BEST ACTOR
 リズ・アーメド(サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ)
 ジェイミー・ベル(SKIN スキン)
 チャドウィック・ボウズマン(マ・レイニーのブラックボトム)
★デルロイ・リンドー(ザ・ファイブ・ブラッズ)
 ラキース・スタンフィールド(ホワイト・ボイス)

 怒りとも哀しみとも判断できない声を上げながら森へと消えていくリンドーの背中が忘れられない。リンドーが体現するのはヴェトナム戦争そのもの、彼はヴェトナムの化身なのだ。スパイク・リー映画で注目された彼がキャリアのハイライトをキメる。映画を観ていて嬉しくなるときがある。監督と俳優の間に強烈な信頼関係が見えるときだ。リーとリンドーの映画愛が高く舞い上がる瞬間だ。


◆BEST ACTRESS
 ジリアン・ベル(ブリタニー・ランズ・ア・マラソン)
 アナ・デ・アルマス(ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密)
★シンシア・エリヴォ(ハリエット)
 エリザベス・モス(透明人間)
 フローレンス・ピュー(ミッドサマー)

 エリヴォの声は良く響く。その佇まいと歌声に触れた者の中に、人間が生きていく上で最も大切なものを浮かび上がらせていく。勝因は楽曲がゴスペルだったことだ。奴隷としてアメリカ大陸に連れてこられた黒人たちの魂が、エリヴォの歌声に重なる力強さ・美しさよ。神々しい光に包まれるエリヴォに、役に出合うとはこういうことなのだと感慨を抱く。


◆BEST SUPPORTING ACTOR
★サシャ・バロン・コーエン(シカゴ7裁判)
 フランク・ランジェラ(シカゴ7裁判)
 ビル・マーレイ(オン・ザ・ロック)
 ジャック・レイナー(ミッドサマー)
 マーク・ライランス(シカゴ7裁判)

 実力派がひしめき合うアンサンブル劇で最も感心するのは「誰かが誰かの演技を喰う」という事象が全く持って起こらなかったことだ。シーンの中で目立つ目立たないはあっても、誰一人演技が霞まない。それだけバランスの取れた演出がなされていたということだ。コーエンにしても深刻な中に放り込むユーモアの魅力は抜きん出ているのに、それでも共演者たちとの距離はわきまえる。これぞ名人芸。


◆BEST SUPPORTING ACTRESS
 グレン・クローズ(ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌)
 トレイシー・エリス・ロス(ネクスト・ドリーム ふたりで叶える夢)
★ジェニファー・ロペス(ハスラーズ)
 フローレンス・ピュー(ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語)
 オクタヴィア・スペンサー(ルース・エドガー)

 映画スターにとって、その肉体は大きな武器だ。ストリッパーに扮したロペスはそれを証明する。周辺女優たちの身体がただの肉の塊に見えてしまうほど、ロペスの身体は強靭で勇敢な意思を持つ。生きる苦しみや哀しみをその肉体に詰め込み、彼女は生きるパワーへ変える。ロペスを眺めていると、本物のヴァイタリティというものが何なのか、答えのないその答えを見せられた気分になる。惚れる!


◆BEST BREAKTHROUGH ACTOR
★ケルヴィン・ハリソン・ジュニア(ルース・エドガー)
 ジョナサン・メジャース(ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ)
 ジョージ・マッケイ(1917 命をかけた伝令)

 実のところ、ハリソン・ジュニアの圧勝だ。実は他にも「ウルフ・アワー」「WAVES ウェイブス」「シカゴ7裁判」「ネクスト・ドリーム ふたりで叶える夢」も公開、いずれも強烈な印象を残しているからだ。スター誕生の瞬間を目撃するのは、本当に楽しい。


◆BEST BREAKTHROUGH ACTRESS
★ジェシー・バックリー(ワイルド・ローズ)
 ドミニク・フィッシュバック(プロジェクト・パワー)
 テイラー・ラッセル(WAVES ウェイブス)

 ヴァイタリティを勘違いした映画は多い。周囲の迷惑顧みずやりたい放題に走ることをそれだとすることが多いのだ。バックリーはそんな愚は侵さない。愚かさの向こうに無邪気さが、涙の後ろに音楽への愛が見える。だから音楽パフォーマンスが映える。



【2020年BEST10をふりかえって】
 映画界も新コロ抜きには語れない。当たり前に思われた劇場での鑑賞が阻まれることになったためだ。しかし、そんなとき救世主となったのが、劇場上映と対立する配信上映だったのは、若干の皮肉と言えるかもしれない。でも、あぁ、本当に配信公開がなかったらと考えるとゾッとする。ただ、そうは言っても映画館での鑑賞がベスト。ベスト10本中7本が劇場鑑賞だ。各劇場は厳しい状況が続くだろうが、何とか持ち堪えて欲しい。





ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画関連ネタ
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク