Mank マンク

Mank マンク “Mank”

監督:デヴィッド・フィンチャー

出演:ゲイリー・オールドマン、アマンダ・セイフライド、チャールズ・ダンス、
   リリー・コリンズ、アーリス・ハワード、トム・ペルフリー、
   サム・トラウトン、フェルディナンド・キングスレー、
   タペンス・ミドルトン、トム・バーク、ジョセフ・クロス、
   ジェイミー・マクシェーン、トビー・レナード・ムーア、モニカ・ゴスマン

評価:★★★




 史上最高の映画は何か。この難題がなされたとき、必ず誰かが挙げるのが「市民ケーン」(41年)だ。デヴィッド・フィンチャーは間違いなく、魅了されたはずだ。物語にも技術にも、だ。名作誕生の裏側には何があったのか、フィンチャーはありったけの映画愛を込めて撮り上げる。

 この手の作品は「生みの苦しみ」が大々的に描かれるものだけれど、面白いことにフィンチャー、そちらにはあまり興味がないらしい。「市民ケーン」は新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストをモデルにしていることで知られている。彼の周辺で何が起こったのか、それを監督・主演オーソン・ウェルズの視点ではなく、脚本家ハーマン・J・マンキウィッツのそれで眺めるのがミソ(ウェルズはあまり出てこない)。アルコール依存症など、困ったところも少なくないマンクに、フィンチャーはシンパシーを寄せる。着眼点がユニークだ。

 マンクの「市民ケーン」執筆の様子と、執筆に影響を与えた過去の出来事を、自在に行き来する構成。とりわけ重要なのが1934年、カリフォルニア知事選挙とマンクの関わりだ。ある「仕事」を通して選挙に関わったマンクの苦悩が丁寧に描かれていく。何故今、『Mank マンク』が作られなければならなかったのか、腑に落ちる。フィンチャーの今を生きることへの危機感がありありと伝わる。

 ただし、堅苦しくはない。フィンチャーは社会への警鐘を鳴らしながら、同時に往年の映画へのウインクを欠かさない。分かりやすいモノクロ撮影以外にも、作品自体が名画を思わせる工夫がぎっしり。砂埃の中をマンクを乗せた車が走るオープニングからレトロスペクティヴな気配が充満。当時の美術や衣装を再現するのは当たり前、懐かしさと怪しさたっぷりの音楽、音の響かせ方、物語のリズム、笑いのタイミング等、いずれも名画を大いに意識している。ただし、それでもなお、ちゃんとフィンチャーの味が残るのが素晴らしい。編集のおかげだろうか。マンクがタイプを打つ場面はもっと派手に魅せて欲しかったけれど…。

 役者たちもその時代へトリップする。ゲイリー・オールドマンによる、問題を起こしても憎めないマンク像はもちろん目に残る。ただ、それだけではない。マリオン・デイヴィス役のアマンダ・セイフライドがクラシックな美しさの中に思いがけない聡明さや哀しみを漂わせるのには魅了されるし、時代の勢いに乗る映画プロデューサーのルイス・B・メイヤーやこの世は我が物とばかりに振る舞うハーストも、マンクに敵対する役柄ながら愉快な存在感だ。

 彼らの掛け合いの中にマンクの人となりが浮かび上がる。単なるタヌキオヤジのように見えて、作品や時代への向き合い方は誠実で、決して失ってはいけないものを見誤ることのない男。マンクがパーティ会場を飛び出したデイヴィスと一緒に公園を歩く場面がある。決して男と女の関係ではないのに妙にロマンティックで、まるで身体が優しさの水で満たされていくようだ。オールドマンとセイフライドの勝利だ。





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