ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌

ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌 “Hillbilly Elegy”

監督:ロン・ハワード

出演:ガブリエル・バッソ、エイミー・アダムス、グレン・クローズ、
   ヘイリー・ベネット、フリーダ・ピント、ボー・ホプキンス、
   オーウェン・アスタロス、ジェシー・C・ボイド

評価:★★




 レッドネックという言葉をはっきり頭に刻んだのは、Green Dayの「American Idiot」を聴いたときだったか。ドナルド・トランプを支持するのが、この層だと言われる。『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』に出てくるのは、まさしくこの言葉に当てはまる家族だ。主人公のイェール大学生の青年は母親がドラッグ中毒で病院に運ばれたことを知り、ニューヨークからオハイオへ帰郷する。

 青年の少年時代からの歩みが一応の話の軸に置かれるものの、それはあまり機能しない。彼はほとんど狂言回しに徹する。ロン・ハワードが代わりに力を入れるのは、白人貧困層の観察だ。やられたらやり返せの心情で暴力を受け入れ、礼儀作法はあってないようなもの。貧困を極めて保険にも入れず、仕事も雇われては解雇されの繰り返し。その実情が生々しい。

 中でもエイミー・アダムスが演じる主人公の母親が強烈だ。成績優秀だったものの、一度道を踏み外してからは、ドラッグに依存しっ放し、口汚い言葉で毎日を罵り、暴力を振るい、人生を恨む。更生を誓っては、それを破る。一日の大半は人目を憚ることなく大声でつく悪態に捧げられる。彼女にも言い分はあるだろうに、けれど本当にその繰り返しだけしか描かれないため、ほとんどモンスターにしか見えなくなる。アダムスの力演が怖い。

 同じ血が流れていても、アダムスの母、主人公の祖母は周りが良く見えている。おそらく彼女は自分を恥じている。娘をそう貶めてしまった自分を恥じている。だからせめて孫だけでも救わなくては…。「努力もしないでチャンスがあると思うな」と言い放つ祖母の愛情を、(メイクで大化けした)グレン・クローズが大芝居でありながら、細やかに魅せる。祖母が万引きを働いた孫に車の中で語り掛ける場面は、映画のハイライトだ。美しい。けれど…。

 けれど…本当にそれを「美」として捉えて良いものか。ハワードが掲げる貧困からの脱出法は教養を身に着けることのようで、以降孫はまるっきり人が変わったようにクズ仲間との関係を断ち、勉学に励み、依然沼にハマったままの家族を残して人生を軌道修正していく。ここに横たわる問題は、いくらなんでも主人公の改心がギャグにしか見えないこと、そして勉強しただけで救われるというのはおめでたい思考に思われること、だ。

 つまり青年の物語が弱い。どうやら彼の未来は明るいようだけれど、それはあくまで幸運にも味方された部分が大きいはずだ。貧困の問題はそう単純ではないからだ。彼は幸運なお坊ちゃまでしかない。…となると、後に残るのはレッドネックを絵に描いたような母のメロドラマだ。そしてそれはドラッグ依存が大きな原因だ。あれ、これはドラッグ依存の恐ろしさを訴えた映画だっけ?…と困惑するのは、そういうわけだ。





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