エンジェル ウォーズ

エンジェル ウォーズ “Sucker Punch”

監督:ザック・スナイダー

出演:エミリー・ブラウニング、アビー・コーニッシュ、ジェナ・マローン、
   ヴァネッサ・ハジェンズ、ジェイミー・チャン、オスカー・アイザック、
   カーラ・グギーノ、ジョン・ハム、スコット・グレン

評価:★★




 ザック・スナイダー監督は基本的に、画面をとことん弄らないと気が済まない人のようだ。目の前に見えているものをそのままフィルムに焼きつけることを嫌い、編集を捻ったり視覚効果をふんだんに取り入れることで、強い印象を残す映像を次々と畳み掛けていく。『エンジェル ウォーズ』でも導入部だけでもその凝り方が伝わる。ドラムンベースが耳に残る大音量の音楽。何秒か置きに挿入されるスローモーション、背景の隅々までに行き届いたCG処理、意表を突いたユニークな構図…。ヒロインが精神病院に入られるまでが、ほとんどセリフに頼ることなくコンパクトに説明される。手際が良いと言って良い。ただし、チープである。

 一流の技術が駆使されているのに、なぜこんなにもチープなのだろう。これは観ている間中、常に付きまとう疑問だ。「300<スリーハンドレッド>」(06年)の映像にはゲンナリしたのに、「ウォッチメン」(09年)のそれには感心するところがあったのを思い出す。どうやら作り込みの加減が問題らしい。スナイダーはおそらく凝り性で、限度を設けるのが苦手な人なのではないか。頭の中に確固たるヴィジョンがあって、それに近づけるためにはどこまでも画面を描き込まなければならない。「300」ではそれが行き過ぎてしまった。「ウォッチメン」は行き過ぎる寸前で止まることができた。『エンジェル ウォーズ』は多分、前者と同じなのだ。スナイダーの執念とでも言うべき画面細部へのこだわりが、ほとんど煩いところまで行き着いてしまい、それはもはや安っぽくしか映らない。情報量はたっぷりでも、それが生身の身体と密接に結びついた高揚感に繋がらない。

 アイデア自体は悪くない。継父により「精神病院」に入れられたヒロインが、患者仲間と共に、脱出を試みるというストーリー。脱出計画自体は別にたいしたものではないのだけれど(というより、あまりにも行き当たりばったりだ)、その際に彼女たちの武器となるのがイマジネーションというのが面白い。ヒロインはダンスの才能があるようで、無心に踊っているときだけ、想像世界にトリップができる。そしてそれを使って隙を作り、脱出への準備を少しずつ進めていく。色々なものに縛られることを強いられる世界。自分が自分でいられる自由を勝ち取るには、もはや想像力を使うしかないとでも言いたげな魅せ方になっている。

 問題はいちばんの見せ場であるはずのこの想像世界の出来映えだ。前述のようにスナイダーはヴィジュアル作りに全身全霊を注ぎ込み、至るところに目を配っていることが手にとるように分かるのだけれど、それがなんともまあ、驚くほどに味気ない。この想像世界のキーワードを挙げるなら「コスプレ」「ゲーム」「日本」だろうか。少女たちは皆、戦闘服をまとうのだけれど、これがもういかにもオタク的匂いを濃厚に発するデザイン。統一感はあれど、演じる女優に合わせて5人とも異なっているのがポイント。エロとロリータを意識したそれになっていて、中でも主人公のエミリー・ブラウニングはセーラー服にミニスカート、しかもヘソ出しといういでたちで、好きな人には本当に堪らない、でも興味のない人には呆れてしまうそれになっている。しかもブラウニングの役名はベイビードールだ。このお人形戦士のような彼女たちが、ゲームで動かされているようなヘナチョコの振り付けで敵をやっつけていく。ぶっ飛ばされれば派手に吹っ飛んでいくし、ジャンプをすれば10メートルは舞い上がる。動作から動作への繋ぎの部分にはキメポーズがあり、どれだけ傷ついても決して汗はかかない。襲い掛かってくるのは巨大鎧武者、ロボット、ゾンビにドラゴンである。冗談じゃなく、ホント、痛みの感じられないゲームでも見せられているかのようだ。こうした戦いの至るところに日本へのウインクがある。ベイビードールを指南する謎の男は、なぜだかお堂で出迎えるし、最初の敵は鎧武者、ベイビードールのいちばんの武器は日本刀で、衣装はセーラー服。ちょいと昔「セーラームーン」というTVアニメが流行っていたと思うけれど、それに通じるものがある。日本を意識してくれてありがとう?いや、むしろ恥ずかしいのは、それがホンモノとして昇華されていないからだろう。

 こうした発想のベースにあるのは、男の女への勝手な妄想というものだろう。いや、妄想なんてものはそもそもが勝手で良いのだけれど、あまりにもステレオタイプで分かりやすく提示されるがために、気持ち悪く感じられるところが多い。可愛い女の子たちが、自分好みのエロテイストの入った衣装を着て、大好きなゲームの世界で、カッコ良くアクションをキメる。うー、たまんねぇ。俺も彼女たちに殺されてぇ。…みたいな。おそらく女の人の中には、この映画を生理的に受けつけられない人もかなりいるのではないか。出来映え云々ではなくて、本能的に拒絶してしまってもおかしくないと思う。ここにあるのは女たちが自由を求めて戦う姿ではない。自由を求めて戦いながら、結局男たちの手の上で転がされている姿だ。

 ただ、思わず笑ってしまうのは、集められた女優たちが丸っきりタイプが違うところだ。ブラウニングはロリータファッションが似合う童顔娘。ジェナ・マローンはショートヘアで無理に突っ張ったところが可愛いタイプ。ヴァネッサ・ハジェンズは切れ長の目のメイドさん風。ジェイミー・チャンはアジア系でエキゾティックな味を加味。このメンバーに入るととても「女優」らしいアビー・コーニッシュはストレートな美しさを見せる。髪形もそれぞれ工夫されているし、もっと言うと、髪の色にも気を遣っている。ブロンドヘアでもちゃんと明るさが違うのだ。スナイダーはきっと、撮っている間中楽しくて仕方がなかったに違いない。





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