ベスト・オブ・エネミーズ 価値ある闘い

ベスト・オブ・エネミーズ 価値ある闘い “The Best of Enemies”

監督:ロビン・ビセル

出演:タラジ・P・ヘンソン、サム・ロックウェル、ウェス・ベントレー、
   アン・ヘッシュ、ニック・サーシー、ブルース・マッギル、
   ジョン・ギャラガー・ジュニア、ニコラス・ローガン

評価:★★★




 1971年ダーラム、公民権活動家アン・アトウォーターとKKK幹部C・P・エリスが、思想の対立を乗り越えて心を通わせていく話だという。KKKとは、説明するまでもない、白人至上主義結社のことで、白い三角マスクを被ったあのスタイルでもお馴染みだ。ここでは黒人の家に銃弾を撃ち込んだり、黒人に理解ある白人を脅す姿が出てくる。つまり普通に考えて、どうしたって分かり合えないふたりの物語だ。

 『ベスト・オブ・エネミーズ 価値ある闘い』がふたりの交流のきっかけの場として用意するのがシャレットと呼ばれる会議だ。黒人小学校が火災になったことから学校の人種統合が話し合われる。もちろんアトウォーターが統合賛成派、エリスが反対派。そしてやっぱりか、エリスの方が歩み寄ることになる。つまり腹を割って話し合えば、そして相手のことを良く知れば理解し合えるよ、ってことだ。

 際どいアプローチだろう。何しろ人種差別の歴史は長く、そして重たい。「Black Lives Matter」が叫ばれる昨今の状況を見ても、いよいよ絶望的な社会構造が出来上がってしまっている。70年代なら、なおさらだ。映画は、黒人と白人でも分かり合えることを「良い話」風にまとめているわけで、物事をこんな風に単純化するなと声が飛んでもおかしくない。これは、白人目線のアプローチなのだ。

 …と首を傾げつつも、支持したくなるのはツボを押さえた演出が気持ち良いからだろうか。テンポ良く進む語り。問題の分かりやすい整理。とっつきやすい登場人物。理由は色々あるけれど、いちばんは結局、ほとんど理想論的立場から物事を語る作り手の視線、それもまた大切ではないかと思うからだ。物事を厳しく見ることも重要で、でもそれだけでは人は気疲れしてしまう。まずはできるところから進んでいく。その意味と意義を知った上で選ばれた演出なのではないか。だからタラジ・P・ヘンソンのような大物黒人女優の参加も実現したのではないか。

 そのヘンソン、アトウォーター役で随分身体を作り込んでの演技。啖呵を切らせたら世界一の名に恥じない迫力で、白人至上主義者に臆することなく挑んでいく。けたたましさの中にはユーモアもある。けれど結局、場をさらうのはエリスに扮したサム・ロックウェルだ。「スリー・ビルボード」(17年)に続く差別主義者役。憎々しく登場し、しかし次第に心情を変化させていく。分かりやすさ優先の演出のため「スリー・ビルボード」ほどに繊細さはない。ただ、すんなりそれに乗ることができる。

 伏線はもちろん、エリスの家族を丁寧に描いたことだ。差別主義者であっても、家に帰れば家族思いの父ちゃん。障害のある息子のことも常に気にかけている。妻は夫の思想に賛同しなくとも、彼を支え続ける。これまた際どい。実は優しさを具えているんですよと紹介した上での心情変化。これだけ種を蒔けば、なるほど「良い話」に進めやすい。けれど、そういう意地悪な見方を封じ込めてしまう魅力がロックウェルにはある。今やちょっと捻くれたアメリカオヤジを演じさせたら、彼の右に出る者はいないのではないか。





ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク