台北の朝、僕は恋をする

台北の朝、僕は恋をする “First Page Taipei”

監督:アーヴィン・チェン

出演:ジャック・ヤオ、アンバー・クォ、ジョセフ・チャン、
   クー・ユールン、カオ・リンフェン

評価:★★★




 台湾・アメリカ合作映画『台北の朝、僕は恋をする』の主人公の青年を演じるジャック・ヤオは、そんなにカッコ良くない。垢抜けない匂いを全身から濃厚に発している。日本人で言うなら、伊藤淳史の雰囲気にオードリー若林正恭のエキスをふんだんに注ぎ込んだ印象。積極的にモテることはないだろうし、可もなく不可もなくのポジションをキープして呑気に笑っているのが似合っちゃう。でもこの手のタイプは、少女漫画的シチュエーションに意外なほどピタリとハマるのだ。ただし、女目線の少女漫画ではなく、男目線の少女漫画に限られる。

 物語の掴みはドイツ映画「ソウル・キッチン」(09年)を連想させる。青年はパリに留学してしまった恋人から別れを切り出され、なんとか金を工面、パリで関係修復を図ろうとする。しかし、もっと近いのはアメリカ映画「キミに逢えたら!」(08年)だろう。ひょんなことから一夜を一緒に行動することになった若い男女の物語。そう言えば、この映画をアメリカで撮るなら、主人公は「キミに逢えたら!」の主演男優であるマイケル・セラが適役かもしれない。

 男の方はどこにでもいそうな風貌だけれど、女の方は可愛い。演じるアンバー・クォは宮崎あおいをもっと冷めた方向に向かわせた感じで、その可愛らしいクォが非モテ系のヤオに少なからず好意を抱いているところがツボとなる。このバカ男、さっさと女の気持ちに気づくが良い。そしてとっととパリの女など忘れるが良い。そう思わせることで引っ張っていく。女はというと、表向きは男の恋を応援する。寂しげな表情も見せずに。そのほんのちょっとひねたところでまた、引っ張っていく。つまり物語の魅力には全く寄り掛かっていない。起こる事件は他愛なく、そこのところが物足りなくもあり、愛らしくもあり…。

 ふたりに互いのことをほとんど語らせないところに脚本の芸がある。男はパリに恋人がいること、パリに行く資金のために小包を運ぶ怪しい仕事を受けていること、女は本屋で働いていること、夜も勉強に忙しいことぐらいしか話さない。後はもう、一夜限りの冒険からどこからともなく自然と漂い始める、どこか甘美なムードに流れを任せる。この庶民レヴェルにおいてちょっとだけ謎めいたところが、若き日の懐かしい心にくすぐりを入れる。

 もう一人の主役は夜の台北ということになるのだろうけれど、さほど日本の夜と違いが感じられなかった。光が止まない夜の商店街の賑やかさも、路地裏のもの寂しさも、どこか温かな風も、恋に落ちる寸前の男女の背景として、さほど魅力を発揮しているとは言い難い。街に魔法をかけた映画なのだから、もう少し魅せ方に工夫があっても良かっただろう。周辺人物のスケッチにエッジが効いていないのが問題だろうか。

 さて、クライマックスの奇怪な踊りはちょっと余計なのだけど、その直前、男と女が本屋で視線を交わす場面になかなか良い味わいあり。素っ気無い態度の女と、それに困惑する男。距離を保ったまま平行して歩きながら、しかし徐々にふたりの表情が変わっていく。生まれたばかりの恋を見守りたくなる。





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