博士と狂人

博士と狂人 “The Professor and the Madman”

監督:P・B・シェムラン

出演:メル・ギブソン、ショーン・ペン、ナタリー・ドーマー、
   エディ・マーサン、ジェニファー・イーリー、
   ジェレミー・アーヴァイン、デヴィッド・オハラ、ヨアン・グリフィズ、
   スティーヴン・ディレーン、スティーヴ・クーガン

評価:★




 英英辞典は英語の勉強をするのにもってこいの教材だ。オックスフォード英語大辞典はその決定版と言えようか。語句の意味のみならず、その語源、例文、過去の書物からの引用まで網羅。『博士と狂人』は初版発行までに70年かかったというそれの、舞台裏に迫った作品だ。ならば言葉へのロマンたっぷりになるに違いない。いや、違いないはずだった。

 メル・ギブソン演じるマレー博士が編纂の中心になる。そこにショーン・ペン扮する精神を病んだ殺人犯マイナーの助けが入るという、大まかな構図。この幹を太らせていけば良いのに、アレやコレやと明後日の方向へ枝葉を伸ばし過ぎて、支離滅裂になってしまった感。どうして作り手はそんな愚を犯したのか。

 それはもう、登場人物が面白い…と言うか、常人離れした言動に走り、けれど彼らの暴走を食い止める術を持ち合わせていなかったからだ。おそらく原作に細かに記されていて、そのいちいちに興味と好奇をかき立てられた作り手は、どれもカットする気になどなれず、漏れなく映像化してやろうと考えたはずだ。

 だってマイナーが殺人を犯すオープニングからしてわけがわからない。赤の他人を自分を狙う者だと思い込んだマイナーが執拗に相手を追い回し、遂に息の根を止めるまで。いやホント、悲惨。いくらでも間違いに気づくだろう瞬間はあったのに。ナタリー・ドーマー演じる殺された男の妻はと言えば、目の前で夫を殺されているのに、いつしか憎しみが癒しや恋心に変わっているという、そんなわけないだろー的変貌を見せる。映画的と言うか、とんでもが過ぎると言うか…。実話だからって…うーん…。

 他にもマレーとマイナーの友情、エディ・マーサン演じる精神病院に勤める男がマイナーを見守る内に抱く感情、マレーの妻としてジェニファー・イーリーが体現する献身、辞典の編纂をめぐる権力争い、はたまた精神病医療の混迷…と次々ポイントになるエピソードが浮上、ほとんど闇鍋状態。そこに俳優たちの顔のどアップが並ぶものだから、ますます画はこってり。胃もたれ確実。

 そうして話がくどくなり、しかし代わりに失われたのは、言葉にまつわるロマン、すなわちこの映画で最も重要なものだから無念と言う他ない。作中最もホッとするのは辞典の意義、言葉のロマンを知るギブソンとスティーヴ・クーガンのやりとりだ。彼らの掛け合いをもっと見たかった。大芝居にハマり自分に酔うばかりのペンばかりじゃゲンナリ、だ。





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