ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ “The Last Black Man in San Francisco”

監督:ジョー・タルボット

出演:ジミー・フェイルズ、ジョナサン・メジャース、
   ティチーナ・アーノルド、ロブ・モーガン、マイク・エップス、
   ジャマル・トゥルーヴェ、フィン・ウィットロック、
   ダニー・グローヴァー、ソーラ・バーチ

評価:★★★★




 ジェントリフィケーション。直接このワードが出てくるわけではないものの、つまりはそういうことだろう。寂れた地域が急激な都市開発により富裕層の住む場所となり、それまでそこに住んでいた(多くは貧しい)人々が他所に追いやられてしまう。主人公ジミーはこの問題の犠牲者と言って良い。スティーヴ・マックイーンがマスタングをぶっ飛ばし、スコット・マッケンジーがどうぞいらっしゃいと歌ったサンフランシスコはもう見当たらない。

 舞台となるのは、そう、サンフランシスコ。では監督のジョー・タルボットはこの街を憎んでいるのだろうか。「くたばれサンフランシスコ!」なんて物騒なセリフも出てくる。けれど、あぁ、ちょっと待て。それでも「この街を憎まないで」というセリフも聞こえてくるではないか。タルボットはサンフランシスコの変化に複雑な思いを抱いている。『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』は多分、その宙ぶらりんの心象をそのまま、嘘偽りなく、正直に映像化した作品なのだ。

 …というわけで、人間と町の関係に拘った内容が面白い。ジミーは祖父が1940年代に建てた家を何とか取り返したいと思っている青年だ。そのためには現在の居住者に遠慮なく家に近づくし、彼らがいなくなれば無断でそこに侵入、生活を始める。暴走…と言って良いだろう。…とここで気づくのはジミーを演じるジミー・フェイルズ(どうして同じ名前?)の目が、いつも虚ろだということだ。まるで何かにとり憑かれているような…。

 ジミーの傍らにはいつも、モントという名の友人がいて、彼こそがジミーの未来の鍵を握る。ジミーの思いを知るモントは、家にまつわる事実を知り、ある行動に出る。ここで友を想う青年の胸で燃える熱いものが見えてグッと来る。モントがジミーを恋愛対象として愛しているように見えなくもないのも絶妙の隠し味だ。モント役のジョナサン・メジャースの潤んだ瞳が忘れられない。

 ジミーとモントと街の関係を見つめるタルボットは、画作りの才能も素晴らしい。冒頭から引き込まれるのは、ジミーとモントがひとつのスケートボードに乗って街を走る場面だ。今のサンフランシスコが一発で伝わる画なのだ。それは街中に過去と未来が入り混じった状態だ。青年ふたりは過去と未来の裂け目に迷い込んだように見える。

 決して分かりやすく全てを説明する映画ではない。もしかしたら人によっては解釈が違ってくることも考えられる。タルボットはそれでも街の匂いを丁寧に嗅ぎ取り、それさえ間違えなければ、大切なことは伝わると踏んだのだろう。まるで詩を詠むかのような語り口。目を瞑ってもサンフランシスコが迫ってくるではないか。そこには「本当の“家”とは」という問いかけの答えも浮かび上がる。





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