マティアス&マキシム

マティアス&マキシム “Matthias et Maxime”

監督・出演:グザヴィエ・ドラン

出演:ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス、ピア=リュック・ファンク、
   サミュエル・ゴチエ、アントワーヌ・ピロン、アディブ・アルクハリデイ、
   ハリス・ディキンソン、アンヌ・ドルヴァル、ミシェリーヌ・ベルナル、
   マリリン・キャストンゲ、カトリーヌ・ブリュネ

評価:★★★




 タイトル通り、主人公はマティアスとマキシム、同じ「M」を頭文字に持つ青年ふたりだ。彼らは子どもの頃から仲が良い。あるとき仲間内で作る映画でキスシーンを演じたことをきっかけに、ふたりは互いを意識するようになってしまう。このプロットがありながらしかし、『マティアス&マキシム』にはラヴストーリーの印象はないに等しい。何故か。

 これはもうマキシムを自身で演じたグザヴィエ・ドランの興味が、キスしたことで思いがけず生まれた感情を自身で抱え込むだけ抱え込み、それを消化できない様、そのものにあるからだ。マティアスとマキシムはキス撮影後、こちらが違和感を感じるほどに、ふたりだけの場面がない。いや、それどころか会話もほとんど見られなくなる。もやもやが膨れ上がる。

 青年ふたりが戸惑う、己の気持ちへの対処の仕方が胸を突き刺す。マティアスは他者への攻撃、つまり苛々した態度、マキシムは己の内臓を捻るような内省的な振る舞いに表れる。達者な演出力を持つドランらしく、どちらも生々しいものがあるものの、如何せん、こういうのを長々と魅せられるのは楽しいものではない。

 見入るのはやはり、マティアスとマキシムが遂にふたりきりになる件だ。互いへの想いが、再びのキスから再点火する。このラヴシーンが強く心に残るのは、それまでの何気ない伏線が綺麗に回収されるからだ。マキシムの指の怪我や顔の痣を優しく愛撫するマティアスが…、あぁ、もう、さっさとくっついちまいなってなもんだ。特にマティアスは、他のどんな言葉よりも説得力ある立ち居振る舞い。演じるガブリエル・ダルメイダ・フレイタスはちょっと顔が濃過ぎるんだけど。

 ようやく互いの気持ちを確認しながら、しかしこの後また、ふたりはぎくしゃくした関係に戻る。…と言うか、意味ありげなラストカットまで擦れ違ってばかり。何と言うか、フツーの甘いロマンス物にはしないという覚悟は結構だけれど、こんなにストレスが溜まる画ばかり並べられても、観ている方も疲れるばかりなり。

 ドランの演出力はそれを差し引いても見ものではある。最初のキスの一切を見せなかったり、煩いだけに見えた他の仲間たちの優しさをさらりと見せたり、不必要に思えたそれぞれの母親との絡み(そう、やっぱり「母」が出てくるのだ)が巧みにリンクしたり…。まあ今回、チューンナップが上手くないせいか冗長に感じられるところは多い。30分短くできたら、青年ふたりの心象がもっとくっきり見えたのではないか。





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