mid90s ミッドナインティーズ

mid90s ミッドナインティーズ “Mid90s”

監督:ジョナ・ヒル

出演:サニー・スリッチ、ルーカス・ヘッジズ、キャサリン・ウォーターストン、
   ナケル・スミス、オーラン・プレナット、ジオ・ガリシア、
   ライダー・マクラフリン、アレクサ・デミー

評価:★★★




 主人公のスティーヴィー少年が年上のスケボー集団とお近づきになりたくて、そろりそろりと彼らとの距離を縮めていく。いつしか声をかけられるようになったスティーヴィーはあるとき、お遣いを頼まれる。要はパシリをさせられるわけだけれど、このときのスティーヴィーの嬉しそうなこと!構ってもらえて大喜びの子犬みたいじゃないか。

 自伝的要素が多いというジョナ・ヒル監督・脚本作『mid90s ミッドナインティーズ』は、スラム街暮らしの不良(と呼ぶには可愛らしい)少年たちからなるスケートボード集団の青春を描く。とても小さな空間、子どもが世界に直面する前の物語だ。よってエピソードの一つひとつは特別大袈裟なところはなく、小さなそればかりだ。けれど、その丁寧な描き込みの積み重ねのおかげで、心に刺さるものは多い。

 中でもデリケートに伝わるのは、グループ内のスティーヴィーの立ち位置だ。パシリでしかなかったスティーヴィー少年が少しずつ存在感を増していくのが楽しく、けれど同時に切ないのだ。スティーヴィーの躍進はつまり、ある意味先輩たちを追い抜くことでもあるからだ。危険に直結する度胸。大きなはったり。膨れ上がる自信。スティーヴィーの熱が自身の運命を変える。うん、楽しくて、切ない。

 次第にメンバーの顔がくっきり見えてくる。最初はスティーヴィーが入るまでいちばん下っ端だったルーベンとの関係を面白く眺めていたのだけど、段々リーダー的存在のレイのカリスマ性に目を奪われる。単なる不良小童に見えたレイの翳りとその奥に眠る詩的な感性が魅力的だ。ちょっと「ムーンライト」(16年)のマハーシャラ・アリを思い出したくらいで、彼とスティーヴィーが語り合うところは、映画のクライマックスのひとつと言って良い。レイを演じるナケル・スミスがどんどん輝きを増す。

 90年代という時代とその音楽の数々に関しては、さほどグッと来ない。これは鑑賞者の当時置かれていた状況が物を言うのかもしれない。ロサンゼルスの明るさは印象的でも影の部分は、青春のそれほどに響かない。ヒルの私的な思いが強いためか。尤も、ヒルの演出は手堅い方だ。母や兄、仲間の描き込みなど、その塩梅が絶妙(これ以上描くと煩くなる)。話もまとまっている。ユーモアはもっと欲しいけれど…。

 さて、“mid90s”とは、仲間のひとりが撮り続けていた日常を映画としてまとめた際のタイトルだ。この映像を最後に持ってくるあたり、巧い。どんな青春にもつきものの寂しい側面が、これにより温かな肯定の光を浴びるからだ。傍から見ればくだらなくてもスティーヴィーにとって大いに意味のある毎日だったことが謳い上げられる。たかが青春。けれどされど青春。自分以外の誰も(いや、時には自分ですらも)その価値を否定できないということだ。





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