ポルトガル、夏の終わり

ポルトガル、夏の終わり “Frankie”

監督:アイラ・サックス

出演:イザベル・ユペール、ブレンダン・グリーソン、マリサ・トメイ、
   ジェレミー・レニエ、パスカル・グレゴリー、ヴィネット・ロビンソン、
   グレッグ・キニア、アリヨン・バカレ、セニア・ナニュア

評価:★★




 アイラ・サックスの中にはダグラス・サークの血が流れているのだろうか。時折頭を過る謎だ。メロドラマに拘り、50年代のそれを現代に蘇らせる。それを使命としているフシがある。ただ、『ポルトガル、夏の終わり』を観る限り、その血は大分薄まった感あり、だ。舞台となるシントラに全てが呑まれているからだ。

 シントラは町全体が世界遺産に登録されているポルトガルの避暑地だ。オープニング、ヒロインがプールに入る場面からして、何が起こるわけでもないのに神秘的だ。色合い、自然の音、小鳥のさえずり…。ちょっと町を歩けば、寂れた町並みが、古めかしくも鮮やかに輝き出す。余計な装飾は要らない。町が勝手に呼吸を整えている。

 サックスはその美しさを丁寧に切り取る。無闇やたらにカメラを動かすことなく人物を積極的に出し入れし、動く紙芝居の気配を抽出する。画面が切り替わる度、エピソードが次に移る度、画面が表情を変える。人物の表情もそれについていく。

 一見効果的な演出はしかし、メロドラマの血を薄くし、ちょっと良い話のそれを濃厚にする。死期を悟った大女優がシントラの町に家族や知人を集め、自分が死んだ後のことに思いを巡らせる話。いつものサックスなら大袈裟を承知の上で不敵に人間関係に揺さぶりをかけるだろうに、ここではシントラの情緒に合わせるかのように慎ましい。含みある会話を繰り返しながら、人物をシントラに溶け込ませる。ところが、溶け込み過ぎて彼らの姿が見えなくなってしまうではないか。少なくない人物たちから感じ取れる感情は、じれったい、これに尽きる。

 主人公のイザベル・ユペールがフツーだ。いや、フツーをとても魅力的にこなしているのだ。変に狂気を強調することなく、国際色豊かなキャストと戯れる。ただ、メロドラマで映えるはずのいつもの個性が抑え込まれているのを見ると、どうしても「これは違う」と呟きたくなる。

 これだ!と思ったのは、疲れたユペールが半裸で眠るベッドに夫役のブレンダン・グリーソンが潜り込む場面だ。ユペールの倍以上はあると思われる巨体を持つグリーソンが、何もできないなりにユペールを包み込む。その画は淋しく、温かく、そしてどこか異様に可笑しいのだ。あぁ、メロドラマはこうでなくては!豊かな才能がシントラに吞まれなかった、数少ない名シーンと言える。





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