ザ・ファイブ・ブラッズ

ザ・ファイブ・ブラッズ “Da 5 Bloods”

監督:スパイク・リー

出演:デルロイ・リンドー、ジョナサン・メジャース、クラーク・ピーターズ、
   ノーム・ルイス、イザイア・ウィットロック・ジュニア、
   チャドウィック・ボウズマン、メラニー・ティエリー、ジャン・レノ、
   ジョニー・グエン、ポール・ウォルター・ハウザー、
   ヤスペル・ペーコネン、ヴェロニカ・グゥ

評価:★★★★




 スパイク・リーは変わらない。今も昔も虐げられる黒人たちを題材に芸術という名の拳を振り上げ、社会に悠然と立ち向かう。『ザ・ファイブ・ブラッズ』は、そのリー映画の集大成かもしれない。「移民は追い返し、壁を築くべきだね」とのたまうドナルド・トランプ信者もいる黒人退役軍人グループ。彼らのヴェトナム帰還の旅路を、己の叫びで染め上げる。

 旅の目的はヴェトナムで死んだ仲間の遺骨を探し出すこと。そして埋めた金塊を手に入れること。そこに仲間との絆、或いは父と息子の問題等が挟まれていく。…となると、良い話風にまとめられるのではないかと心配するものの、そこはリー、抜かりない。そんな温かな旅の皮を少しずつ剥ぎ取り、ヒリヒリとした痛みを白日の下に晒す。そう、リーの目的は50年経っても未だヴェトナム戦争が終わらないという現実だ。

 登場人物が抱えるPTSD、現在も除去できずに残る地雷、人間同士の憎しみの連鎖。リーは50年前と現代で同じ人物を同じ俳優に演じさせる不敵な試みに挑む。時に記録映画風、時に70年代映画風の気配を漂わせる。画面の比率を柔軟に操作する。円熟の演出の数々が戦争の残酷さ・苛烈さを痛烈に浮かび上がらせる。中でも秀逸なのは傷を抱えた退役軍人たちの描き込みだ。

 そのグループ、ブラッズの面々はそれぞれに問題を抱えていて、それにどう折り合いをつけるか、大いに見ものだ。別れた恋人との関係や帰還後の人生を通してその生き方が見えてくる。中でも強烈なのは、仲がよろしくない息子が旅に同行することになるポールだ。前半からその匂いを漂わせるとは言え、ポールの変態はそれはそれは衝撃的だ。

 誰よりも旅の目的と金塊に執着するポールの抱える闇。果たして彼は怪物になってしまったのか。暗く重くのしかかるその謎が後半最大の燃料になる。仲間と別れ、怒りとも哀しみとも判断できない声を上げながら森に消えていくポール。ある人物と再会し子どものように泣くポール。カメラの向こう(こちら)を凝視して胸の内を独白するポール。演じるデルロイ・リンドーの電撃的パフォーマンスが観る者を硬直させ、ポールがヴェトナム戦争そのもの、ヴェトナムの化身であることを語り掛ける。序盤でポールが「ランボー」(82年)好きであることを告白するのは、終わってみれば、とんでもない伏線だ。

 リーにとっては鎮魂歌でもあるのだろう。恥ずべきアメリカの歴史の中を生きた先人たちの戦いに敬意を表し、その犠牲者たちに花を手向け、今の己に、今を生きる人々ができることが何なのかを空高くへ掲げる。ブラッズのヴェトナム再訪は極めて厳しいものになるけれど、それぞれが何らかの安らぎに辿り着く。リーの強さと優しさに触れるようではないか。





ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク