ある日モテ期がやってきた

ある日モテ期がやってきた “She's Out of My League”

監督:ジム・フィールド・スミス

出演:ジェイ・バルチェル、アリス・イヴ、T・J・ミラー、
   マイク・ヴォーゲル、ネイト・トレンス、クリステン・リッター、
   ジェフ・スタルツ、リンジー・スローン、カイル・ボーンハイマー

評価:★★★




 主人公の青年は悪友に「ムードル(moodle)」だと形容される。もちろんこれは造語で、プードルのような男を意味する。女たちは彼を可愛がるが、決して寝ようとはしない。それがムードルだ。冴えない容姿で冴えない毎日を送るムードルが、グラマラスな美女にうっかり恋してしまう。しかもどうやら両想い。街中を見渡すと実感することだけれど、気づいているのかいないのかは別にして、世の中の大半の者はさほど容姿に恵まれていない。『ある日モテ期がやってきた』は彼らの肩を優しく叩く。

 笑いの多くは「俺なんかがあんな美女に好かれるわけがないだろう」という哀しい思考をおちょくったものになっている。人はそれをコンプレックスと呼ぶ。自信も経験もない主人公が嬉しい気分と卑屈な気分を忙しく交錯させながら、彼女との距離を縮めていく様に、意外に現実感がある。主人公は決して美青年ではない。しかし、優しい性分で思いやりもたっぷり持っていることが、さり気なく描かれていくのが気持ち良い。少なくとも友人にいてくれたら嬉しいタイプ。彼の間の抜けた言動を笑いながら、同時に応援したくもなる仕掛け。嫌味じゃない心の優しさを丁寧に掬い取っている。

 こういう極端な設定の場合、笑いがコント風になってしまうのが常なのだけど、それが巧妙に避けられている。男目線の話だから下ネタも多くなっているものの、それすらもちゃんと物語の中で機能している。しかも憎めないチャームがある。例えば、彼女の部屋で寛いでいる際、ムードが盛り上がり彼女が馬乗りになる場面。信じられない状況に戸惑い、そして興奮を感じてしまった青年は、下半身がうっかり暴走、そして爆発してしまう。こんなバカバカしさもちゃんとストーリー上に大きな意味を持っている。悪友にけしかけられて下の毛を剃り落とす場面も可笑しい。こんな情けない画、久しぶりに観た気がする。

 ジェイ・バルチェルがハマり役だ。主演作「魔法使いの弟子」(10年)では良いんだか悪いんだか分かり難かったけれど、ここでのバルチェルは、その滲み出る優しさをたっぷり役柄に注ぎ込んでいる。注目は眉毛の動き方で、ほとんど意思を持っているのではないかと思えるほどに動く動く。勢い余って髪の生え際まで動いている場面もある。その心の内を正直に表現する眉毛。ジョニー・デップやレオナルド・ディカプリオの眉毛の動き方以上に面白い。相手役のアリス・イヴも、最初こそ整形っぽい美人だと思ったけれど、徐々に温かさを感じさせていく。二の腕やふくらはぎに適度に脂肪がついているのが、なかなかよろし。立ち振る舞いにも適度に隙があって、なるほどこれなら男たちは放っておくのは難しいだろう。バルチェルとイヴの相性も悪くない。

 忘れてはいけないのが悪友たちの存在だ。T・J・ミラー、マイク・ヴォーゲル、ネイト・トレンスとバルチェルの絡みには男特有の幼さがあっけらかんと塗されている。血の気が多かったり、異様に優しかったり、表現が直接的過ぎたり、色々問題はあっても、根っこの部分で互いを思い合っていることがよく伝わってくる。そしてその彼らが主人公カップルの恋を助けていくのが嬉しい気分を誘う。ちょっと泣けてしまうほどに。ハートの力を信じている魅せ方だと思う。

 世間の思い込みをそのまま描き出しているところだけは気になった。容姿が冴えない男は心でそれをカヴァーしている…というような思い込み。実はこんな失礼なことはないのではないかという気もする。それにヒロインを聖女のように扱うあたりに、女たちは不可解さを覚えるかもしれない。ステレオタイプの男女像を打ち砕く捻りが欲しかったところだ。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ