ホワイト・ボイス

ホワイト・ボイス “Sorry to Bother You”

監督:ブーツ・ライリー

出演:ラキース・スタンフィールド、テッサ・トンプソン、アーミー・ハマー、
   ジャーメイン・フォーラー、スティーヴン・ユァン、
   オマリ・ハードウィック、テリー・クルーズ、
   ダニー・グローヴァー、フォレスト・ウィテカー

声の出演:デヴィッド・クロス、リリー・ジェームズ、ロザリオ・ドーソン

評価:★★★★




 白人と黒人では喋り方が違うのだ。英語を母国語にしていない者には、確かに黒人の方がリズミカルで音楽的な喋り方に聞こえる。『ホワイト・ボイス』とは白人が理想と思っている声のことで、黒人である主人公はそれを獲得することで出世街道に入る。テレマーケティングを仕事にする彼は、電話の向こうの消費者が相手だ。彼らはホワイト・ボイスが聞こえてきた途端安心し、喜んで商品を買う。

 …と書けば、人種問題を痛烈に皮肉った内容だと分かるだろう。どれだけ多様性が叫ばれても根っこの部分では消えることのない人種間の溝。主人公のホワイト・ボイスは白人俳優が充てる徹底ぶりで、その違和感を物ともせず、主人公はとんとん拍子で極貧生活から抜け出していく。黒人としてのアイデンティティーなんてあったもんじゃない。

 人種問題の抉り方に呑気に喜んでいるとしかし、その後尋常ではない転調が次々訪れるので要注意だ。確かに人種問題を突いている。けれどそれは、映画の一側面でしかないことが明らかになるのだ。何度も脱皮を繰り返す生き物のように、それを繰り返しては映画の表情が変わっていく。しかも、変態後の姿にいちいちパンチがある。

 映画の空気はどう表現すれば良いのだろう。最初は明るいデヴィッド・リンチ風だと思ったのに、次の瞬間にはチャーリー・カウフマンの匂いがしてくる。かと思えば、スタンリー・キューブリックの気配が立ち上がってくるし、また次の場面ではテリー・ギリアムの声がどこからともなく聞こえてくる。しかもそこに真似事の印象は皆無だ。完全にオリジナル。編集と音楽の凝り方が担う部分が大きい。

 友人を裏切ってまで目的を達成する貪欲な男の物語は、いつしかSF映画へと飛躍していく。そのあたりまで来ると、地球規模の倫理観やら資本主義の構造やらが前面にせり出してくるくらいで、汚いガレージから始まった物語がよくぞそこまで膨れ上がったとほとんど呆れ返るほどだ。映画のテイストも基本はコメディでも、ドラマ性やスリラー要素もたっぷり含んでいる。ジャンルレスの魅力が炸裂する。アイデアのいちいちが柔らかいのが勝因だ。

 主人公の動かし方が巧い。仕事のない(後にテレマーケティング会社に就職)若い黒人男の旅路(そう、ちょっとした旅行感覚まである)は、人間が誰しも持っている欲望と密着している。演じるラキース・スタンフィールドの細い身体はそれを映し出す鏡になる。明らかに間違った方向に走ったとしても、主人公の中に自分を見てしまう居心地の悪さ、そしてある種の快感よ。その結末には笑いと恐怖が詰まっている。





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