ワイルド・ローズ

ワイルド・ローズ “Wild Rose”

監督:トム・ハーパー

出演:ジェシー・バックリー、ジュリー・ウォルターズ、ソフィー・オコネドー、
   ジェイミー・シーヴェス、クレイグ・パーキンソン、
   ジェームズ・ハークネス、ジェイニー・ゴッドリー、
   デイジー・リトルフィールド、アダム・ミッチェル、
   ライアン・カー、ニコール・カー

評価:★★★★




 歌手になることを夢見る者の物語は、「アリー スター誕生」(18年)の例を挙げるまでもなく珍しくない。ただ、『ワイルド・ローズ』の主人公ローズ=リン・ハーランはスコットランド出身で、かつアメリカに渡ってカントリー歌手なりたいというのが面白い。ふたりの子持ちで、しかも出所したばかりというのも目を引く。コメディではない。ドラマだ。

 面白いのは設定だけではない。ハーランの人となりがイイ。ナオミ・ワッツ風の頬を持つリス顔の彼女は、喧嘩っ早く、大雑把。何事も長続きせず、責任感もあるとは言えない。簡単に言うと、苛立ちを誘う言動が多いのだけれど、それにも拘らず、彼女を好きにならずにはいられない。

 それはもう、彼女自身の、つまりその魂の気の好さ、大らかさから来ているのだろう。深刻な空気に包まれても滲み出るその可笑しみが、周りの人間の、映画の観客の心を掴んで離さない。どれだけ無茶をしても愚かさの向こうに無邪気さが見える。どれだけ人に迷惑をかけても、汚い言葉や切ない涙の後ろに音楽への愛がちらつく。トレードマークはいつだって、真っ白なブーツだ。

 ジェシー・バックリーはそこのところを完璧に捉えている。カントリーへの敬愛で一杯になった身体をまず差し出し、しかし現実を知ることで自分に疑いを持ち、本当の自分を偽っていることを自覚して希望を失う。夢が現実の壁に阻まれる普遍的ストーリーの中、バックリーはハーランの、生きる哀しみと表裏一体となった可笑しみを決して見失わない。そして人は時に、それをヴァイタリティと呼ぶのだ。

 ヴァイタリティは、その通り、歌声となって表れる。そこいらの人気歌手を蹴散らすほどの深いコクを湛えたヴォーカルが圧巻。アップビートの楽曲もスロウナンバーも自在に歌いこなすバックリーに驚愕。ハイライトはクライマックスで披露する「Glasgow」という楽曲だろう。何をどう歌うべきか、それを悟った者の心が曝け出される。3コードの真実の意味を知る。

 周辺人物も皆、良い味わいだ。ハーランの可能性を信じてサポートを申し出る金持ちマダムにはソフィー・オコネドー。相変わらずのひょうきん顔にホッとする。母親には任せて安心ジュリー・ウォルターズ。厳しい言葉と態度の数々がいちいち突き刺さる。キュッとしまった口元がカッコイイ。オコネドーとウォルターズは、言わば「アメとムチ」だ。ハーランが生きていく上で良いバランスになるのと同時に、物語上でも良いアクセントを創り出しているのだった。バックリーはだからこそ一層、痛快に暴れることができるというわけだ。





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