ペイン・アンド・グローリー

ペイン・アンド・グローリー “Dolor y gloria”

監督:ペドロ・アルモドヴァル

出演:アントニオ・バンデラス、ペネロペ・クルス、
   アシエル・エチェアンディア、レオナルド・スバラーリャ、
   ノラ・ナヴァス、フエリタ・セラーノ

評価:★★★★




 ペドロ・アルモドヴァルは相変わらず色彩感覚が独特だ。映画ファンなら、もはやその画を見れば一発で彼のそれだと分かるだろう。…と不思議なのは、これだけ主張が強いのだ、アルモドヴァルの画の影響を受ける後の世代の作家が出てきても良さそうなものなのに、一向に現れない。アルモドヴァルの映像センスが唯一無二の境地に達している証かもしれない。

 『ペイン・アンド・グローリー』のアルモドヴァルは主人公を老いた男に設定する。病の影響か、身体の節々が痛み、何か食べようものなら喉につかえて咽てしまう。このよぼよぼよれよれ男の職業は映画監督だという。…となれば役柄にアルモドヴァル自身が投影されていると考えるのは自然な流れだろう。アルモドヴァルの場合、主人公のようにスランプとは無縁だけれど…。

 物語は主人公の元にかつての作品の上映会開催の知らせが来るところから始まる。彼はまどろみの中で昔を、人生を思い返していく。そしてそれが今の荒れ果てた生活を立て直す助けになる。この構成自体に物珍しさはないものの、さすがアルモドヴァル、その手慣れた語り口に惚れ惚れする。以前は泥臭さが目立っていたけれど(それはそれで面白い)、もはやスタイリッシュと呼んで差し支えないそれだ。過去を見つめる視線も仰々しくなることなく、慎ましく優雅そのもの。

 アルモドヴァルの集大成…そう言いたくなるのは、アルモドヴァル映画の養分として語られてきたものが次々顔を出すからだ。映画への妥協ない情熱。仲間との確執。愛する男との高揚と後悔。性的欲望の目覚め。母との暮らしとその信頼。三人の男と一人の女が登場、主人公の人生を形作ってきたものを体現する。

 久しぶりにアルモドヴァル映画で主人公を演じるアントニオ・バンデラスは、その老いた肉体に人生の痛みと栄光を映し出していく。派手なアクションはなくとも、その素肌を見せることがなくとも、その佇まいからは中途半端な状況に置かれた今の己への苦悶が見える。切実で、苦しい。バンデラスが肉体の痛みに悶えるとき、それは心が悲鳴を上げるときでもある。

 過去と向き合う作業が大々的に取り上げられる場合、並の映画は今のパートが添え物になってしまうものだけれど、当然のことながらアルモドヴァルがそんな野暮な罠にハマることはない。アルモドヴァルが語るのは結局、今なのだ。人生を回想をしたたかに燃料に変え、明日を生きる明かりを灯す。アルモドヴァルがいかに人間を愛しているか(とりわけ母を!)、それがありありと分かる。痛快を極めるとはこのことだ。





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