バッド・エデュケーション

バッド・エデュケーション “Bad Education”

監督:コリー・フィンリー

出演:ヒュー・ジャックマン、アリソン・ジャニー、レイ・ロマーノ、
   ジェラルディン・ヴィスワナサン、アレックス・ウルフ、
   ラファエル・カザル、アナリー・アシュフォード

評価:★★★




 事件は21世に入ったばかりのニューヨーク州ロングアイランドで発覚する。とある教育現場で22万ドルにも及ぶ使途不明金を横領したのが教育長とその同僚だと明るみになったのだ。『バッド・エデュケーション』が優れているのは、このふたりを裏の顔を持つ極悪人として描かなかったことだろう。悪に染まり切った本性なんてものはどこにも見当たらない。

 では作り手は、彼らをどのように見ているのか。基本としてあるのは、彼らが善人ということだ。悪人ではない。担当地区の生徒たちの成績を全米4位に押し上げる結果を残したのは、彼らが教育熱心で、かつそれを実現する能力を具えていた証。生徒の一人ひとりに目を向け、現場で働く教師や生徒の親たちにも気を配る。嫌々ではない。それが正しいと信じる。作り手は、それでも道を踏み外してしまった彼らの動向を、分析はしない。ただ、じっくり見守る。したがって、彼らの人物像は型にハメられることがない。

 教育長を演じるヒュー・ジャックマンの身体がとても小さく見える。シワも一気に増えたみたいだ。スタイルは相変わらず良く、顔も驚くほど小さいものの、その佇まいは庶民的だ。常に笑みを絶やさない教育現場で彼は、時折隙を見せる。その芝居に見入る。一瞬の冷酷な目。拙いところを見られたときの動揺。ジャックマンを眺めていると、決して平坦ではなかった教育者としての歴史が見えてくる。

 ジャックマンと同僚アリソン・ジャニーの関係描写は見もののひとつだ。ジャックマンの右腕として同じく横領に手を染めるジャニーの、ふてぶてしさを感じさせる表情が面白い。阿吽の呼吸で悪事を働いた彼らが、瞬く間にその関係を崩していく。この際、ジャックマンがあっさりジャニーを見捨てるのが哀しくも可笑しい。それに対するジャニーの態度も哀しくて可笑しい。

 この哀しくて可笑しいというのは、映画の体質とも言えるだろう。エピソードの多くで同じように感じる。例えば、学校の天井が腐り、少しずつ水が漏れる場面。或いは、ジャックマンの二重生活が明らかになる場面。また或いは、ジャックマンが不釣り合いな場所でしわ取りクリームを熱心に顔に乗せる場面。哀しくて可笑しい、人間はそんな風にしか生きられないと肩を叩かれているみたいだ。

 ところで、この事件の詳細を大手メディアよりも先に報じたのは、地元の新聞部だったという。「教育者 vs. 生徒」という構図に「ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!」(99年)を思い出す。ただ、あちらほどの辛辣な皮肉は効いていない。話を進めるコマ以上のものがない。ここをじっくり煮詰めることができたなら、もっと堅苦しさからは解放されたのではないか。





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