エジソンズ・ゲーム

エジソンズ・ゲーム “The Current War”

監督:アルフォンソ・ゴメス=レホン

出演:ベネディクト・カンバーバッチ、マイケル・シャノン、ニコラス・ホルト、
   トム・ホランド、キャサリン・ウォーターストン、タペンス・ミドルトン、
   スタンリー・タウンゼント、マシュー・マクファディン

評価:★★




 トーマス・エジソンが主人公だからと言って、「発明」にまつわる考察がアレコレなされるわけではない。もうひとりの主人公がジョージ・ウェスティングハウスと聞けば、誰でもピンと来るはずだ。所謂「電流戦争」を映像化した実話ドラマ。『エジソンズ・ゲーム』はビジネス映画なのだ。

 …とそれらしく書いたものの、競争を勝ち抜くためにはどうしたら良いのか、その手解きをなす自己啓発本的要素はさほどない。アメリカが今の時代も延々と続けるネガティヴ・キャンペーンの分析色が濃い。自分の商品が優れていることを示すため、ライヴァルのそれを貶すのだ。時にはそうと分からないように世論を誘導、相手が落ちてきたところで、一気に抜く。

 問題はこの(思い切り好意的に言えば)「頭脳戦」が、映画的ではないことだ。相手を出し抜くため、その胸の内にはどす黒いものが色々渦巻くものの、それが肉体的快感を伴ったアクションとして表れることがほとんどない。セリフ頼みのエピソードが並ぶことになる。すると画はどうしても、単調になる。

 アルフォンソ・ゴメス=レホンはそれを避けるために工夫する。とりわけ撮影と編集のリズムは印象的だ。サスペンスを盛り上げるのに一役買っていることは間違いない。ただ、既視感を覚える。そうだ。マーティン・スコセッシを思わせるところがあるのだ。…と思ったらプロデュースにはスコセッシの名前がある。おそらくゴメス=レホンは熱心なスコセッシ信者だろう。ならば、音楽の仰々しい使い方は控えて欲しかった。

 エジソンとウェスティングハウスに扮するのは、ベネディクト・カンバーバッチとマイケル・シャノン、一度見たら決して忘れられない顔を持つふたりだ。このふたりの対決は…シャノンの圧勝だろう。シャノンの顔の「圧」があまりにも強力で、カンバーバッチの面白顔が吹っ飛んでしまった感。シャノンの担当する場面の大半が「静」のそれであることは、シャノンの顔面力がいかにとんでもないかということの証明だ。その他のキャストではニコラ・テスラ役のニコラス・ホルトが器用な存在感で画面を引き締めていることに注目したい。

 ところで、幼少時から伝記本でお馴染みのエジソンの、傲慢な性格を前面に押し出す演出には多少のショックを受ける。近年良く言われるエジソン像を反映してのものなのだろうけれど、発明描写がいよいよ本当に見当たらないので、発明王としてのイメージはもはや完全に崩れ去る。少しは格好良いところも…なんて甘いだろうか。トム・ホランド演じるサミュエル・インサル秘書がご主人大好きの子犬みたいにあれだけ懐いてるんだからサ。





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