ルース・エドガー

ルース・エドガー “Luce”

監督:ジュリアス・オナー

出演:ケルヴィン・ハリソン・ジュニア、ナオミ・ワッツ、ティム・ロス、
   オクタヴィア・スペンサー、ブライアン・ブラッドリー、アンドレア・バン、
   ノーバート・レオ・バッツ、マーシャ・ステファニー・ブレイク

評価:★★★




 いきなり謎めいた問い掛けがなされる。世界史の課題として出されたのは、「歴史的人物の思想を代弁したレポート」。文武両道を極めるルース・エドガー少年が母国の独裁者の視点を取り上げ、暴力至上主義と取られかねないそれを提出したからだ。果たして彼は危険な思想の持ち主なのか否か。物語を貫くそれにそそられる。

 ただし、作り手の手腕はその装飾部分にこそ光る。少年の正体に執着すると、差別問題だけが蔓延る世界から抜け出せないだろう。ジュリアス・オナー監督はそれを巧妙に避け、人種や貧富、偏見やレッテル、血の繋がりや黒人間の対立等、エピソードが切り替わる度に新しい問題を浮上させる。その度に人物の見方が変わる。

 そう、人物配置・設定が優秀だ。ルースで言えば、政治的に不安定な国で生まれたこと。その影響で幼少時は今では考えられない問題児だったこと。そこからアメリカの白人夫妻の子として迎えられたこと。息子を信じたい白人夫妻も、夫と妻ではルースへの距離の取り方が違っている。ルースと対立する教師を黒人にしたのも技あり一本で、しかも彼女も生徒それぞれを型にハメてしまう傾向がある。謎はますます深まる。

 脚本が優れているということなのだろう。ルースの優等生な言動を映し出し、それでいながら聖人とも怪物とも取れる見方を提示していく。ただひとつ確かなのは、聡明であるがゆえに彼が何かを仕掛けていることで、いずれにせよ簡単に白黒つけられない問題の数々が、いつしかアメリカの、いや人類の複雑怪奇なそれへと変態していくのが恐ろしい。個人を描きながら国家や歴史を掴まえて見せるということだ。

 タイトルロールを演じるケルヴィン・ハリソン・ジュニアが素晴らしく輝いている。ルースの告白で最も深刻に感じられる、優等生の箱に閉じ込められる息苦しさをそこかしこに滲ませながら、それを逆手に取り、社会を翻弄する様を曖昧にも爽快にも魅せる。ラストショット、ジョギング中のハリソン・ジュニアの表情は映画のひとつの回答だ。問題の根深さが突き刺さる。オクタヴィア・スペンサーのようなクセモノと堂々渡り合う度胸も見逃してはいけない。

 ところで、物語途中からもやもやするところがあったのだ。ルースが母親を「エイミー」と名前で呼ぶのだ。養子ゆえの習慣なのかと無理矢理己を納得させようとしたところ、終幕一度、「ママ」と呼ぶではないか。これに気づいたとき、物語がいよいよ違う表情を見せ始める。ルースが聖人であれ怪物であれ、優等生『ルース・エドガー』は確かに存在し、今を生きている。それを歓迎するべきか否か、判断は観る者に委ねられる。舞台臭こそ気になるものの、クレヴァーな物語構造に唸る。





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