ザ・ブック・オブ・ヘンリー

ザ・ブック・オブ・ヘンリー “The Book of Henry”

監督:コリン・トレヴォロウ

出演:ナオミ・ワッツ、ジェイデン・リーベラー、ジェイコブ・トレンブレイ、
   ディーン・ノリス、マディ・ジーグラー、サラ・シルヴァーマン、
   リー・ペイス、ボビー・モイニハン、トーニャ・ピンキンス、
   ジャクソン・ニコル、ジェラルディン・ヒューズ

評価:★




 真っ先に目が行くのは、ヘンリーの造形だろう。11歳にして超のつく天才の彼は、株の投資に手を出し(そして成功)、家計のやりくりを任され、「夢よりも現実を見ろ」と言い放つ。母子家庭の父親的存在とも言えるか。要するに子どもらしさのまるでない少年。ほとんど嫌味レヴェルなのに、それでも嫌悪感から逃れられているのは、演じるジェイデン・リーベラーの涼やかな佇まいのおかげだろうか。

 『ザ・ブック・オブ・ヘンリー』はヘンリーが、隣人少女が義父に虐待を受けていると知るところから始まる。ヘンリーは少女を何とか助けたい。虐待は映画の重要なテーマのひとつで、ヘンリーがどれだけ訴えても動かない大人たちは、厄介なことには見て見ぬふりをする怠惰な社会の象徴と言えるだろう。苛立ちを誘われつつも、設定として納得はできる。

 しかし、ヘンリーの成長を描くと思われた物語は、半分ほど進んだところで、あまりにも意外な転調を迎えるのだ。いや、意外と言うより唐突と言った方が良い。ある人物の身体に異変が起こり、何と物語から退場してしまうのだ。しかも転調はそれだけではない。青春ドラマから泣きのドラマに変わったかと思ったら、今度はスリラーへと形を変え、終幕には家族ドラマに落ち着く七変化。盛り沢山なのではない。作り手が題材をコントロールできていない。

 作り手の姿勢が雑なところは、スリラー部分に顕著だ。ある人物がある人物を殺害しようとする計画は、所謂「完全犯罪」なのだろう。準備は淀みなく淡々と進められ、実行場面もスムーズだ。作り手はこの部分に潜むサスペンスをどう引き出すか、その緻密さを丁寧に積み重ねるのではなく、計画を立てた人物が天才の「ヘンリー」であることに寄り掛かる。天才少年の計画だから問題ない、というわけだ。

 最後まで見届けると良く分かるのは、これがヘンリーの母親の成長の物語とするのが最善だということだ。愛情深い母親には違いないものの、主体性に乏しい彼女は、一人前の大人とは言い難い。だからヘンリーに「暴力より悪いものは無関心だ」なんて言われてしまう。犯罪計画が彼女の心の再生に繋がるセラピー効果をもたらすと見ることも可能か。ナオミ・ワッツは筋の通らない展開の中で懸命だ。そしてその努力は報われない。

 後味の悪さも気味悪いところではないか。虐待という重大要素が実に安易に扱われる。生と死に対する向き合い方が雑と言い換えることもできる。登場人物の大半はそれに気づかない。それどころか、以前とは違う自分に満足しているようだ。唯一変わらないのはリー・ペイス演じる医師だろうか。ただし、彼はワッツに気のある素振りを見せるだけの不要人物なのだった。いやはや、どこまでも頓珍漢。





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