神々と男たち

神々と男たち “Des hommes et des dieux”

監督:グザヴィエ・ヴォーボワ

出演:ランベール・ウィルソン、マイケル・ロンズデイル、
   オリヴィエ・ラブルダン、フィリップ・ロダンバッシュ、
   ジャック・エルラン、オイク・ピション、
   グザヴィエ・マリー、ジャン=マリー・フラン

評価:★★




 舞台になっているアルジェリアはアフリカ大陸北部、地中海に面していて、リビアとモロッコに挟まれている。思い切り大雑把で幼い思考に頼るなら、砂漠が果てしなく広がっている風景を想像してしまうけれど、ここに出てくる人里離れた村は草木が生い茂っているし、水も沸いているし、鳥のさえずりは聴こえるし、家畜ものんびりと息をしている。丘から見下ろすのどかな田舎の風景に、それだけで心洗われる。『神々と男たち』はそこにある修道院が舞台になっている。フランス人修道士たちがイスラム教徒である村人たちと共同生活を送っている。慎ましい日々の暮らし、共に働き共に笑い、病める者を優しく労わる生活。どうしてそんな風にフランス人とアルジェリア人の毎日が優しく溶け合うことが可能だったのかとふと思う。

 思うけれどしかし、その答えは提示されない。ベースに敷かれているのはあくまで、1996年、武装イスラム教集団によって引き起こされたフランス人修道士誘拐・殺害事件であり、修道士たちが死に至るまで何があったのか、どんな葛藤を抱いていたのかという問い掛けなのだ。しかも、あからさまに劇的なエピソードは回避されていて、礼拝や食事、労働、村人との交流の中にそれを見つけ出すという手法。つまりはとても真面目な作りだ。作り手もこのシリアスな題材をドラマティックに描写するのは抵抗があったに違いない。修道士たちの魂を掬い上げる、それだけに全力を尽くしたのではないか。

 ただし、そういった努力が、物語に宿るべき肉体性、或いは人間の身体が語り掛ける言語を殺してしまった感は否めない。修道士たちはそれを志すだけあって、非常に理性的で、冷静沈着。声を荒げることもなければ暴力に走ることもない。ただ、相手の目を見つめ、互いの心に言葉を贈り、自身の内面を凝視する。それゆえ彼らの会話は、意外なほどに直接的・説明的になっている。行間に別の意味を滑り込ませることなどなく、極めて率直な会話が繰り広げられる。これが退屈を誘う。彼らの言動は理性によって抑制されていて、それは立派とも言えるのだけれど、逆に本能的な部分がほとんど無視されてしまった。

 彼らの人物造型の根底にあるのがキリスト教であることが大きいだろう。宗教を土台に敷くと、確かに揺るぎない安定感は出るのだけれど、同時にそれを言い訳に使っているようにも思えてしまう。果たして彼らがキリスト教徒でなかったら、修道士でなかったらどのような選択をしていただろうか。彼らが特別な人間に見えてしまうのは拙いのではないか。修道士のひとりが言う。「愛は全てを希望し、愛は全てに耐える」。なるほど納得はできても、どこか腑に落ちない。

 さて、この映画にはバックミュージックとしての音楽が全然流れない。自然の生の音を大切にした静かな作り。それゆえ修道士たちによる祈りの歌の数々が際立って耳に入ってくる。また、いよいよ悲劇が起こる夜の食事で「白鳥の湖」が流れる場面のインパクトも強烈。「最後の晩餐」を大いに意識した画面作りになっているのも面白く、このときの修道士役の役者たちの表情にはグッと見入る。こういう映画の技をもっと散りばめて欲しかった。





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