タイガーテール ある家族の記憶

タイガーテール ある家族の記憶 “Tigertail”

監督:アラン・ヤン

出演:ツィ・マー、クリスティーン・コー、リー・ホンチー、ヨウシン・ファン、
   クンジェ・リー、ジョアン・チェン、フィオナ・フー、ヤン・クイメイ

評価:★★




 男と女は少年と少女だった頃に出会う。台湾の田舎町、画面いっぱいに広がる田園風景に、同じアジア人だからか、郷愁を誘われる。母と離れて祖父母と暮らす少年はそこで、「泣くな。強くなりなさい」と言われる。少年に波乱万丈の人生が待ち受けることを悟らせる。『タイガーテール ある家族の記憶』で最も目に焼くショットは、あまりにも早い、物語のプロローグと言うべき冒頭にある。残りは…。

 残りは…取るに足らない話を美化と陶酔で飾り立てたみたいだ。今はアメリカで暮らす老人が過去(主に青年時代)を振り返る。同時に疎遠な娘との関係を修復しようとする。つまりふたつの時代が並行して描かれる。時間の交錯が上手く機能しないため、どちらも男の人生のダイジェスト版(しかもやたら薄っぺらな)を見せられている気分になる。

 おそらく台湾から一発逆転を狙って渡った男を通して、アメリカン・ドリームの現実を見せたかったのだろう。貧しい暮らし。アジア人への偏見。報われない苛立ち。愛のない結婚。大切な人を置き去りにした後悔。これ以上愛せない生涯の女を捨ててまで選んだ人生が、一向に色づかない虚しさ。多少の金は手に入れても、人生は灰色のまま。

 これが胸に迫らないのは結局、主人公の魅力不足が原因だ。何と言っても、幼少時に出会った最愛の人への熱がちっとも伝わらないのがダメだ。食事してダンスしてセックスして…と平凡な日常風景が僅かに描かれるぐらいで、狂おしいまでの愛には程遠く、後の彼の人生に彼女との関係が影を落とすようなそれには見えない。青年時代の大半を演じるリー・ホンチーはチンピラ顔の上、白の半袖シャツとパンツという、個人的に忌み嫌っているスタイルが似合い過ぎだ。加えて彼は平然と、上手く行かない人生をアメリカン・ドリームのせいにする。

 老いた主人公が最愛の人と再会する場面は大いに拍子抜けする。ヨウシン・ファンが(苦手な)ジョアン・チェンになるという変身にもがっくり来るものの、その掛け合いの味気なさが退屈だ。高級レストランで冷静に過去を振り返るふたりが、いっそ滑稽。女はどうして積年の恨みを吐き出さないのだ。大人の分別か。くだらない。

 当然娘との和解も、「何となく」綴られるのみだ。記憶が生む強さと弱さ、それが人生に入り込む意味を見出すため、過剰な演出は避けたのだろう。その慎ましさが裏目に出る。主人公は過去を厳しくも美しく思い出し、己の悲劇を憐れむ。でもそれだけでは辛い。だから、せめて今そこにある現実を癒して欲しい。控え目な話を装うものの、極めて図々しい話なのだ。





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