ウィロビー家の子どもたち

ウィロビー家の子どもたち “The Willoughbys”

監督:クリス・パーン

声の出演:ウィル・フォーテ、アレッシア・カーラ、ショーン・カレン、
   マーティン・ショート、ジェーン・クラコウスキー、テリー・クルーズ、
   マヤ・ルドルフ、リッキー・ジャーヴェイス

評価:★★★




 アニメーション映画に出てくる家族は大抵仲が良い。子ども向けを意識するがゆえだろう。『ウィロビー家の子どもたち』にはそれが当てはまらない。服も食べ物も愛情も与えられない子どもたちが主人公なのだ。「育児放棄」「幼児虐待」「ネグレクト」といった言葉がちらつく。ただし、それにメソメソする映画ではない。親なんて要らないと悟った子どもたちは、親の命を頂戴するべく、彼らを危険地帯に送り込む。ワーオ。もちろんブラック・コメディだ。

 陰惨になってもおかしくない世界観でも軽やかなのはまず、画の魅力によるところが大きい。曲線と直線が繊細に描かれた画柄で、とりわけ人物のデザインでそれが活きる。ティム少年など、棒切れのように手足が細く、顎はないに等しい。ネグレクトゆえの画と見ることも可能だけれど、それだけではさすがに寂しい。そこで投入されるのがえんじ色の毛糸による髪の毛で、これがあるだけで随分画面が優しくなる。他のキャラクターの髪の毛にも毛糸があてがわれる。

 所謂コンピュータ・アニメーションなのに、それよりもクレイ・アニメーションに近い温度を感じる。動きは滑らかな部分とカクカクした部分が混在、色は原色が極力避けられ、アクションはスピードよりも細やかさに注意が払われる。結果、CGのような綺麗さよりも手作りの温か味が出ているのだ。一転、背景は手描きアニメーションを思わせるのも狙い通りだろう。

 キャラクターも生き生きする。親を捨てる子どもたちの傷が丁寧に描き出される一方、塩沢ときヘアで登場するナニーの愛情深さが入念にスケッチされる。髪の毛の大きさとハート型が彼女を象徴。マヤ・ルドルフの声もぴったり。「オズの魔法使」(39年)「スパイダーマン」(02年)「メリー・ポピンズ」(64年)「チャーリーとチョコレート工場」(05年)といった名作パロディを受け入れる柔軟さを持ち合わせたキャラクターたちだ。 

 不幸な子どもたちはどうやって本物の幸せを手に入れるのだろう。親と子が理解し合い愛情を確認し合うというのが自然な流れに思えるものの、ここには笑いが振り撒かれながらもかなりシヴィアな展開が待っている。これはもう、子どもが親を選べない時代ではないと宣言しているかのようではないか。かなり厳しく、毅然とした態度だ。

 ただ、そうは言っても優しい眼差しは忘れられない。冒険の末に子どもたちが学ぶものには、当たり前だと受け入れていた価値観を打ち破る勇気が密着する。そこでナレーションを務める青い縞猫の存在が効いてくる。声を充てるのがリッキー・ジャーヴェイス。なるほど辛辣な言葉の奥にそれだけで終わらない何かが見えるではないか。一度世間の厳しさに打ちのめされた子どもたちはきっと、これまで以上に逞しく生きていく。そう信じさせる、最後の魔法の一振りと言えよう。





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