タイラー・レイク 命の奪還

タイラー・レイク 命の奪還 “Extraction”

監督:サム・ハーグレイヴ

出演:クリス・ヘムズワース、ルドラクシャ・ジェイスワル、
   パンカジ・トリパティ、デヴィッド・ハーバー、
   ルシフテ・ファラハニ、ランディープ・フーダー

評価:★★★




 アクションスター、クリス・ヘムズワースを愛でるなら、ソー役がベストだろうか。答えは、否。確かにソーはヘムズワースが演じることで魅力的に仕上げられたものの、アクションに関しては視覚効果という名の装飾が本来の彼の味を僅かに奪っている。『タイラー・レイク 命の奪還』は違う。もちろんスタントを使ったところはあるだろう。が、余計な飾りが削ぎ落とされた分、その無駄のない動きのスピード感、スケール感、カリスマ性が前面に出る。惚れ惚れする。男が憧れる男とはこういうものだ。

 中でもダッカの街を舞台にした最初の逃走劇には驚く。ダッカは都市には違いないものの、森があり、川があり、建物が立ち並び、雑踏が続く。ヘリコプター、船、車、トラックが乱れる。ヘムズワースと少年が次々襲われては、それを切り抜ける。気がつくと長回しが始まっている(実際はそう見せているだけだろう)。カーチェイスだけかと思いきや、建物に逃げ込んでからも延々続く。息つく暇を与えない。緊張感は途切れない。興奮は盛り上がる一方だ。

 クライマックス、検問中の橋の上でのバトルも魅せる。やや感傷が強くなり過ぎたキライはあるものの、こちらは撮影と編集の呼吸により画が持つ力を減退させない。映画の大半はアクションで、けれど意外に暑苦しくはないのは、演出に緩急がついているからなのだろう。個々のアクションを見ても、物語全体を見ても。それにあぁ、ヘムズワースと少年の関係がイイ。

 「レオン」(94年)的甘ったるさが顔を出すこともある。しかし、多くの場面でそれを果敢に撥ねつける。窮地でヘムズワースが聞く。「俺を信じるか?」。すると少年は愛敬ある顔で「無理だ」と即答だ。男同士ならではのカラッとした距離感が守られ、けれどいつしかふたりが父と息子のようなものを間に滲ませていくあたり、非常に効率良い描かれ方と言える。アクションの中でドラマを生むのだ。

 おそらく好き嫌いが割れるのは暴力の苛烈さだろう。首が絞められ、骨が砕ける。銃弾が頭を吹っ飛ばし、鍬が脳天に突き刺さる。ナイフで裂かれた喉からは血が噴き出す。しかし、作り手は暴力で遊んでいる、そんな印象は受けない。語りの節々に、むしろ暴力を拒否する覚悟を感じさせる。

 例えば、子どもをバトルに参加させる件はどうか。子どもでも死からは逃れられず、かつヘムズワースの大きな脅威になる。途中でヘムズワースとタッグを組む少年のお守り役の男も、その八方塞がりな状況が描かれることで暴力の権化にはならない。ムンバイの麻薬王とダッカの麻薬王の抗争とそこに塗れる暴力に、ヘムズワースと少年はノーを突きつける。無慈悲な過去も持つヘムズワースが獲得する、ある種の安らぎ、そこに辿り着くまでの映画と言うことができよう。





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