ナイチンゲール

ナイチンゲール “The Nightingale”

監督:ジェニファー・ケント

出演:アイスリング・フランシオシ、サム・クラフリン、ベイカリ・ガナンバル、
   デイモン・ヘリマン、ハリー・グリーンウッド、ユエン・レスリー、
   チャーリー・ショットウェル、マイケル・シーズビー

評価:★★★★




 オーストラリアが英国領だった時代、英国将校に強姦された上、愛する夫と子どもを目の前で惨殺されたアイルランド人の女が主人公。『ナイチンゲール』は復讐の物語と言って良いだろう。実際、次に何が起こるのか、展開そのものが持つ力でぐいぐい魅せていく。けれど、それだけではない。異様な迫力が漲る。

 それはジェニファー・ケント監督の暴力に対する真摯な向き合い方から来ている。例えば、復讐のきっかけとなる夫と赤子が悪徳将校に殺される場面の凄惨さを見よ。柔な監督ならば直接的な描写を避けるところだろうに、ケントはその一部始終を目を背けることなくじっくり撮り上げる。暴力を嬉々として撮るということではない。その悍ましさをすくい上げるのだ。

 様々なタイプの暴力が溢れる。男が女を腕力でねじ伏せる性暴力と、そして植民地時代の大陸における白人の黒人に対する言われなき暴力が、大きく分けたふたつのそれになるだろうか。いずれも腸が煮えくり返る。ただし、このふたつの暴力は分かり易い。

 困惑を誘うのは、復讐にまつわる暴力だ。復讐からは何も生まれないと言うのは簡単だ。しかし、ヒロインの置かれた境遇・体験を目撃・体感し、それでもそれを容易く口にできるだろうか。観る者の価値観に揺さぶりをかける。それがケントの目指すところだろう。

 それを実現するため、ヒロインの案内役として出てくる黒人の存在が効いてくる。彼もまた、白人(英国人)に大いなる恨みを抱いている。ここで面白いのは、ヒロイン自身もまた黒人に偏見を抱いていることで、それが溶けていくところは重い場面が続く物語の微かなる希望だ。演じるアイスリング・フランシオシ(目力が素晴らしい)とベイカリ・ガナンバル(誠実さに真実味あり)の相性もとても良い。

 もうひとつ忘れていけないのは、復讐の舞台となる深い森の表情だ。単に険しいだけではない。鬱蒼と茂る木々の中に宿る神秘的な気配がふたりを包み込む。妖しくうねる枝。冷たく頬を刺す空気。突然の幻影。このあたりは「ババドック 暗闇の魔物」(14年)を手掛けた監督らしい画と言えようか。森は女と男の心を惑わし、しかし同時に癒してもいく。旅の終着点でその苛烈さと優しさを思わずにはいられない。





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