ジョン・F・ドノヴァンの死と生

ジョン・F・ドノヴァンの死と生 “The Death and Life of John F. Donovan”

監督:グザヴィエ・ドラン

出演:キット・ハリントン、ベン・シュネッツァー、ジェイコブ・トレンブレイ、
   ナタリー・ポートマン、スーザン・サランドン、キャシー・ベイツ、
   サンディ・ニュートン、アマラ・カラン、サラ・ガドン、マイケル・ガンボン

評価:★




 10年前、ジョン・F・ドノヴァンという名の俳優が29歳の若さで死んだのだという。彼は当時、少年と何度も文通をしていたらしい。ドノヴァンの死の真相は分からない。グザヴィエ・ドランは成長した少年の手記の取材模様を探ることで、その謎を明かそうと試みる。一種のミステリーと言って良いだろうか。

 いつものドラン映画と違うのは、全編英語により語られる点だ。もしかしたらそれが不調の原因か。投げ掛けられる謎が謎の体を成していないだけでなく、ほとんど自己陶酔、自己憐憫の独白を聞かされているかのように空虚なのだ。

 ドノヴァンと少年、ふたりが繋がるのは「孤独」という実に分かり易い魔物で、エピソードのいちいちはそこから派生した、大変個人的な苦悩に留まる。そこにそれぞれの母親との難しい関係が入り込むあたりは、ドランらしいと言えるだろうか。それぞれの母はスーザン・サランドンとナタリー・ポートマン。どちらも力演。怖いよ。

 ただ、様々な角度から語られる孤独が、いつしか俳優論に転じていく件になると、ドランは一体どこに向かっているのだろうと不安になるというものだ。誰もが抱える孤独を大袈裟に飾り立て、一般人には計り知れない不穏を浮かび上がらせる。同性愛もしっかり盛り込まれる。けれど、一向に胸に響かない。感情の乗らない記録を読まされているみたいだ。人物に寄り過ぎるカメラ、独特の色合いの画面…全て裏目に出る。

 ドノヴァンを演じるキット・ハリントンは、髭面でもかなりの童顔で若々しさは悪くないものの、孤独の気配とは相性が悪い。寂しい表情も記号的だ。少年役のジェイコブ・トレンブレイの方が目に残る。なお、大人になった少年のインタヴューの件ははっきりと不要。物語の関節を固くするだけではないか。

 『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』はドランがレオナルド・ディカプリオにファンレターを書いた少年時代の記憶から生まれた物語だという。けれど、強引に連想するのはヒース・レジャーだったりする。ある日突然、この世から姿を消してしまったレジャー。ドノヴァンとレジャーでは全然事情が違うだろうけれど、俳優論云々のエピソードで不意に胸が締めつけられたことだけは記しておこう。





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