ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏

ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏 “Jeremiah Terminator LeRoy”

監督:ジャスティン・ケリー

出演:クリステン・スチュワート、ローラ・ダーン、
   ケルヴィン・ハリソン・ジュニア、コートニー・ラヴ、
   ジェームズ・ジャガー、ジム・スタージェス、ダイアン・クルーガー

評価:★★




 J・T・リロイが実在の人物でないと知ったのは、映画「サラ、いつわりの祈り」(04年)を観る前だったか後だったか。その記憶すらあやふやな21世紀初頭の物語。ある女流作家がボーイフレンドの妹を美少年風に男装させ、J・T・リロイとして世に出したというのが真相だ。文字で表すとややこしいものの、そのあたりがすっきり見られるのは良い。

 ただ、『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』はこの旨味ある題材に目を凝らし過ぎたようで、女ふたりが大胆不敵に世間を欺くという最大のポイントを、物語の軸にできなかった。どのようにして嘘を本当らしく見せたのか。いちばん身を乗り出すところをさらっと処理し、女ふたりの心象風景に過剰に注意を向ける。

 ローラ・ダーン演じる実際の作者ローラで言えば、その孤独な魂を大いに愛でる。恵まれた環境で育たなかった彼女は、「J・T・リロイ」を創り出すことで(もうひとつの人格を創り出すことで)自分を肯定する。本当の己を隠す。それこそが最大の防御だと信じて。正しい正しくないの見方は彼女には無意味になる。それなのにいつしか自分が創り出したアバターへの嫉妬も芽生えて…。

 クリステン・スチュワートが扮した操り人形サヴァンナで言えば、その自我の目覚めが大々的に取り上げられる。親元を離れ、兄の住む街にやって来た彼女が、本当の自分を見つけるまで。カミング・オブ・エイジ ストーリーとしての側面は、まだまだ若々しいスチュワートの容姿に合っていると言えるだろうか。

 加えてサヴァンナは同性愛にまつわるテーマも掲げる。男の恋人はいるものの、その青いヴェリーショートなヘアスタイルを中心に纏う空気には、なるほどローラが少年に見立てたくなるボーイッシュな匂いがあり、分かり易く彼女は女性も恋愛対象として見る。

 …とそう、この映画は様々な要素に手を出し過ぎている。そのせいでせっかく誰もが別の自分を演じているという最大のトピックがぼやけてしまったのだ。主人公ふたりの気持ちは伝わっても、それをなぞっているだけにしか見えない。スチュワートのヴィジュアルの魅力と共に柱となるべきそれが頼りなく、女ふたりが仕掛けたもの以上のものが浮かび上がらない。





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