黒い司法 0%からの奇跡

黒い司法 0%からの奇跡 “Just Mercy”

監督:デスティン・ダニエル・クレットン

出演:マイケル・B・ジョーダン、ジェイミー・フォックス、ブリー・ラーソン、
   ロブ・モーガン、ティム・ブレイク・ネルソン、レイフ・スポール

評価:★★




 「アラバマ物語」(62年)のタイトルが何度も飛び出すのが白々しい。アラバマ州は正義の地だと言いたいのに違いない。けれど映画はたった30年ほど前にありありと残る差別意識を炙り出す。人間の野蛮さはそう簡単に消え去らない。偽善という言葉を思い出す。

 87年アラバマ、黒人男性が白人少女殺害の無実の罪で逮捕、死刑を宣告される。この判決を覆すべく奔走するのが『黒い司法 0%からの奇跡』の主人公ブライアン・スティーヴンソンで、その戦いの物語は、まあ言ってしまえば、型通りだ。そうなったのは白黒はっきりつけることで満足し、それを混ぜ合わせることを一切しないからだ。

 裁判に関わる白人の大半は漏れなく差別意識を露わにする。保安官、弁護士、検察官、果ては判事まで…。黒人は虐げられる者と同義で、彼らはどんな絶望下でも諦めることなく、悪しき社会に立ち向かっていく。その象徴がスティーヴンソンというわけだ。実に分かり易い。

 斯くして、スティーヴンソンはほとんど聖人だ。「最も困っている人のために闘いなさい」という母の教えを守り、不条理な社会に真っ向から挑む彼の眩しいこと。マイケル・B・ジョーダンの凛々しい佇まいとの相乗効果で、スティーヴンソンは決して挫けない理想の守り人として燦然と輝く。ジョーダンが「フルートベール駅で」(13年)で差別の犠牲者を演じていたことを思い出す。感慨深い。

 けれどだからこそ、こんなに単純で良いのかと心配になる。差別が悪いことは分かっている。負けるべきではない。ただ、それに寄り掛かり過ぎると、差別の本質が記号化されて見えてくる。この映画で心境を変化させるのは僅かふたりだ。刑務所の若い看守と起訴を諦めない検察の男だ。彼らの変化を眺める方が英雄スティーヴンソン物語よりも興味深いという事実。

 まあ、あまりに差別が当然のものとして蔓延るからでもあるのだろう。裁判経過を見ると、どう考えても狂った思考がまかり通っていたのだ。腸が煮えくり返ることの連続だ。怒りは分かる。でも差別の謎は分からない。その分析力が欠けている。ブライアン・スティーヴンソンは立派だ。それで終わらせてしまうには勿体無い題材だ。





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