野性の呼び声

野性の呼び声 “The Call of the Wild”

監督:クリス・サンダース

出演:ハリソン・フォード、ダン・スティーヴンス、カレン・ギラン、
   オマール・シー、ブラッドリー・ウィットフォード、コリン・ウッデル

評価:★★




 変だ。犬には甘いことを自覚している者の目から見て、主人公犬のバックにイマイチ肩入れできないのだ。人間に忠実で、どこか抜けていて、愛らしく尻尾を振り、いざというときには頼りになるヤツ。彼の活躍に胸躍っても全くおかしくないのに、あぁ、それなのに何故。どうやらそれはバックの容姿と動作に違和感を感じるところから来ている。何とこのバック、視覚効果により作られたものなのだ。

 最初こそ騙される。また、名犬がスクリーン狭しと走り回る喜びに浸る。ところが、やはり実際の犬とCGにより再現された犬では、小さいようで大きな違いがあるのだ。CGだからこそ見ていられる画ももちろんある。アクションやギャグはCGの力によるところが大きい。けれど、そのために本来犬が持っている愛嬌が消えてしまうのは、何か違う気がする。

 いちばんの問題はバックに表情を作り過ぎるところだ。運命に導かれるように次々主人が変わっていくバックの心象を伝えるべく、作り手はバックの目を中心にその心理を細かに描き込む。ゆえに彼が何を思っているのか、言葉はなくともちゃんと伝わるものの、それと引き換えに犬ならではの人懐っこい魅力は人工的なそれに変換されてしまった。『野性の呼び声』は「名探偵ピカチュウ」(19年)あたりと同じ、実写とアニメーションの合成映画でしかないということだ。

 これは惜しい。何故なら物語が悪くないからだ。単純な冒険談として眺めていると、思いがけず終盤にスピリチュアルな味が出てくるあたり、侮れない。利己的な人間たちに翻弄され、南部から北部へと生きる土地を移していくバックが最終的に辿り着く場所。そこには己のルーツにまつわる気配が色濃くあり、自分のいちばんの理解者と遂に出会ったバックが幸せを勝ち取る話だという勝手な思い込みを気持ち良く裏切る。

 それに説得力を与えるのは、そこに行きつくまでの画の面白さだ。郵便配達の犬ぞり犬として、他の犬たちと一緒に雪の上を駆ける画。老人と一緒にカヌーに乗って激しい川を行く画。大自然が広がるアラスカで、真っ白なオオカミと心を通わせる画。とりわけハリソン・フォード演じる老人との相性は素晴らしく、ただふたりが一緒に画面に入るだけで興奮が引き出される。

 ただし、詩情まではない。作り物の犬だから、だ。あぁ、だから視覚効果はもっと補助的に使えば良かった。基本は実際の犬に演じさせ、それでは作れない画が出て来たとき視覚効果に頼れば良かった。おそらくこの映画では犬好きの心はキャッチできない。彼らは本物の犬の魅力を知っているからだ。全編ではなくとも、「ライオン・キング」(19年)や「モーグリ:ジャングルの伝説」(18年)と同じような味気なさを覚えるのが無念だ。





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