アンカット・ダイヤモンド

アンカット・ダイヤモンド “Uncut Gems”

監督:ベニー・サフディ、ジョシュ・サフディ

出演:アダム・サンドラー、ラキース・スタンフィールド、ジュリア・フォックス、
   ケヴィン・ガーネット、イディナ・メンゼル、エリック・ボゴシアン、
   ジャド・ハーシュ、キース・ウィリアム・リチャーズ、マイク・フランセサ、
   ジョナサン・アランベイエフ、ノア・フィッシャー、エイベル・テスファイ

評価:★★★




 どうやらサフディ兄弟は、八方塞がりの窮地に陥った者が事態の好転を狙って右往左往する様を愛でる傾向があるようで、「グッド・タイム」(17年)に引き続き、『アンカット・ダイヤモンド』でも主人公が絶体絶命のところから始まる。物語の中心に置かれるのは、エチオピアの鉱山で発掘されたブラックオパールだ。宝石は強欲から逃れられない人の心を惑わせる。基本だ。

 ニューヨークで宝石商を営むハワードを囲むのは、宝石であり、ギャンブルであり、女(浮気相手)だ。サフディ兄弟はこれらを組み合わせることで、ハワードを奇妙なテンションへと引きずり込む。大金持ちになれるかもしれないという高揚。それが叶わないかもしれないという恐れ。期待と不安を衝突させ、心休まることのない中途半端な状況にハワードをぶら下げておくのだ。

 ここでアダム・サンドラーだ。髭面になっても人の好さを隠せないサンドラーの顔に浮かぶのは、行き場のない焦りとそれでも一発逆転に縋る諦めの悪さだ。…となると主人公へ一体感など持つことが難しいはずだ。ところが、サンドラー特有の親しみ易さがそれを実現する。いつでも冷静さをキープする「ファーゴ」(96年)「シンプル・プラン」(98年)の登場人物とはそこが違う。

 サンドラーが体現するのは栄光と破滅だ。人生は選択の連続で、ハワードはそれを間違え続けるようにしか見えない。希少価値の高い宝石を手に入れたことで浮かれ、人気バスケットボール選手にそれを自慢たらしく見せたのがアンラッキーの始まり。栄光はすぐ傍に見えるのに、そこにどうしても辿り着けず、それどころかすぐ後ろに破滅が迫っているあたりに、可笑しみ交じりのサスペンスが滑り込む。

 追い詰められていく様を魅せるサンドラー ショーがクライマックスを迎えるのは、ハワードが最後の大勝負に出る場面だ。もはやハワードのテンションは本人にも制御不能の状態であり、あぁ、だからこそ彼は四面楚歌の状態にあるのだと大いに納得する。ここでのサンドラーは親しみやすさを消し去り、その背後に眠っていた狂気を放出する。なかなかの中毒性ではないか。

 実はこの物語、極めて簡単に要約すると、宝石商が貸したブラックオパールを返せと言い続けているだけなのだ。ところが、サフディ兄弟の手にかかると、これが人生の不条理を描き出すドラマティック・スリラーに化ける。全編に電子音ミュージックを流し、スピード感ある編集を畳み掛け、その先でちっぽけな人間たちを遊ばせる。観客は彼らに自分を見る。どうしようもなく空虚な後味が舌の上に残り続ける。





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