わたしを離さないで

わたしを離さないで “Never Let Me Go”

監督:マーク・ロマネク

出演:キャリー・マリガン、キーラ・ナイトレイ、アンドリュー・ガーフィールド、
   シャーロット・ランプリング、サリー・ホーキンス、
   イジー・メイクル・スモール、エラ・パーネル、チャーリー・ロウ

評価:★★★




 ジェーン・モイハントが歌う「Never Let Me Go」が何度か流れる。この楽曲がタイトルにもなっているように、頑丈なラヴストーリーを話の軸に置いているのが正解だろう。SF要素を絡めたミステリーの味も具えているし、そこから派生していく社会派の側面や政治的アプローチも重要な意味を持つ。けれど物語を貫いているのは、愛の物語に他ならない。それも「恋っていいよねー」だとか「愛って素晴らしいね」だとか、軽々しく語ることのできるようなものではない。生きていくためにはどうしたって付きまとう「醜」が何重にも絡みついた、静かだけれど、生々しい愛。

 そう、『わたしを離さないで』は同じ寄宿舎で育ったキャシー、ルース、トミーが奏でる哀しい愛の物語。物心がついた頃からそこで生活している彼らが見せる愛の形が意外に多彩だ。少年少女の初々しい初恋から始まり、強引に掴みとる愛、流される愛、セックスの絡んだ愛、嫉妬に塗れた愛、身を引く愛…が次々と浮上してくる。愛を美化することなく、繊細さと獰猛さを併せ持つものとして捉える視線が誠実だ。三角形のバランスが距離感をぐらつかせながら、少しずつ崩れていく。ここに実力ある若手スターたちの上手さが光る。

 キャリー・マリガンの諦めにも似た振る舞いも、キーラ・ナイトレイの余裕のない攻め方も、アンドリュー・ガーフィールドの浮遊しているかのように頼りなさも、全てが一歩引いたところから演技されている。声を荒げることなく命を燃やしていく、哀しい運命の人物の中に、それぞれが果敢に入り込んでいる。慎み深く、奥行きがある。

 彼らの運命を左右するのは、背景として徐々に明らかになる「生」の謎だ。彼らの毎日には親の存在がちっとも見えない。直接的な言葉は出てこないものの、彼らが生きる意味は早々に仄めかされる。古風な美術設計なのに、どこか近未来的な匂いを感じさせるのが面白い。広々とした外の世界にも、なぜだか見えないヴェールがかけられているようだ。監督のマーク・ロマネクは「ストーカー」(02年)で現代社会に近未来的空気を持ち込んでいたけれど、ここでも世間から切り離された古めかしい世界に未来の匂いを微かに散りばめることに成功している。

 若者たちが自らの運命をすんなり受け入れている、或いは諦めているように見えるのが引っ掛かる。いくら謎が謎とは言え、物分かりが良過ぎるのではないか。そう思ったところで、徐々に彼らの強さが見えてくる。限られた人生の中で必死にもがく様に「生」の根っこの部分がちらつく。充実した毎日だけが生きることではない。愛することも、愛されることも、悩むことも、苦しむことも、醜くなることも、何気ない日常の全てが当たり前ではない、生きていることなのだと。

 終幕になって謎に絡めた要素が前面に出てくるのが惜しい。蒔かれていた伏線が生きてくるのは愉快だけれど、途端に彼らの人生の全貌が見えてしまうのは、情緒が足りないというものだろう。ここは辛抱強く、仄めかす程度の演出に留めて欲しかったと思う。





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