ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密

ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密 “Knives Out”

監督:ライアン・ジョンソン

出演:ダニエル・クレイグ、アナ・デ・アルマス、クリス・エヴァンス、
   ジェイミー・リー・カーティス、マイケル・シャノン、ドン・ジョンソン、
   トニ・コレット、ラキース・スタンフィールド、キャサリン・ラングフォード、
   ジェイデン・マーテル、フランク・オズ、リキ・リンドホーム、
   エディ・パターソン、K・カラン、ノア・セガン、クリストファー・プラマー

評価:★★★★




 歴史を感じさせる大邸宅。大富豪の謎の死。家族・関係者は全員容疑者。ヴァラエティに富んだ動機。莫大なる遺産と遺言状。癖のある探偵。二転三転する「真相」。その背後で動く人間という生き物の業。『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』はミステリー好きの心をくすぐる設定・仕掛けがてんこ盛り。これならばアガサ・クリスティも歓迎してくれるのではないか。

 ライアン・ジョンソンは多分、自身も相当なミステリー好きのはずだ。本当のミステリーの面白さが、トリック云々の奇抜さに頼るものではないことを知っている。どうして事件が起こったのか。容疑者たちの思惑がどのように事件に絡み、その性格がどんな影響を及ぼし、それにより謎がどう表情を変えていくのか。ミステリーの核を見誤ることがない。簡単に言うと、脚本の芯が極めて頑丈なのだ。真犯人がさほど意外ではなくとも充実感に満たされるのはそのためだ。

 登場人物は少なくない。家族関係は複雑とは言わないまでも整理が必要で、彼らは皆、怪しい表情を浮かべる。家政婦や子どもだって容疑者から外してはいけないだろう。ジョンソンは大邸宅の中で動き回る登場人物を自在に操り、その出し入れをスマートに見せる。過去の場面の挿入も淀みない。語りのペースも観る者の生理を知り抜いているかのような気持ち良さだ。

 だからもちろん、物語に身を任せるのがベストだ。ただ、これが殺人ミステリー以上の奥行きを湛えていることを見逃すのは勿体無い。遺産の行方に気が気ではない登場人物たちの喧騒は、分断の時代の象徴であり、真犯人の身勝手さなど、それこそドナルド・トランプを強烈に意識しているだろう。あぁ、この世界に救いはない。

 …と絶望を感じる気配に呑み込まれそうでそうならないのは、死んだ富豪の専属看護師を務める女の存在があるからだ。彼女は母親が不法移民だという急所を抱えている。容疑者のひとりでありながら、それでも彼女なら信じても良いと思わせる人間味がある。嘘をつくと吐いてしまうというのも可笑しい。アナ・デ・アルマスは作品の魂というべき役どころを愛らしく生き生きと演じている。彼女は完全なる正義ではない。でもその葛藤こそが人間なのだと信じさせてくれるのだ。

 ダニエル・クレイグ演じる探偵は真実を解き明かして終わりではない。事件の背後に隠れた人間という生き物の面白さを炙り出す。そうして初めて名探偵と呼べるのだ。謎解き場面で容疑者を全員集合させないという凡ミスもあるものの、いよいよ真実を明らかにする場面の高揚感は、クレイグ探偵のメリハリの効いたパフォーマンスあればこそ。斯くして、「物的証拠が真実とは限らない。そして人は嘘をつく」というミステリーの定石に希望を絡ませる。後味すっきり、実に鮮やかではないか。





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