アースクエイクバード

アースクエイクバード “Earthquake Bird”

監督:ウォッシュ・ウエストモアランド

出演:アリシア・ヴィキャンデル、ライリー・キーオ、小林直己、
   祐真キキ、佐久間良子、山村憲之介、室山和廣、
   クリスタル・ケイ、岩瀬晶子、ジャック・ヒューストン

評価:★★




 何に驚くってアリシア・ヴィキャンデルに驚く。ヴィキャンデルの何に驚くって日本への溶け込み方に驚く。日本で映画を撮った外国俳優は少なくないけれど、ここまで日本独特の気配に身を沈めた外国俳優はいないのではないか。演じるのが日本に滞在、翻訳を生業としているスウェーデン女性だからということもあるのだろう。しかし、ちょっとやそっとの努力でできる技ではないことは確かだ。

 ヴィキャンデルの日本語の達者なこと。もちろん日本人が聞けば外国人のそれだとすぐさま分かるものの、聞き取りに何の問題もなし(敢えて言うなら、もう少しでデイヴ・スペクター レヴェルになる)なのはもちろん、そこに感情の揺れや微妙なニュアンスを加えてくるのだから恐れ入る。小柄な身体が良かったのか、日本人向けに作られた服の数々にも美しく馴染む。箸や湯呑、振袖や簪、障子、畳といった日本的なものとも相性が良く、普段使いを疑わないほど。

 それはつまり、大勢の日本人の中に入り込んでも違和感を感じさせないということだ。湿気が多く人口密度の高い日本の中で、多くの外国人は、異物として浮き上がるものだ。例えば、共演のライリー・キーオは完全にやって来たばかりの外国人でしかない(もちろんそう演出される)。ヴィキャンデルは演出だけではどうにもならない「生活」の壁を乗り越え、役柄に説得力を与えている。これが本物の俳優というものだ。

 ヴィキャンデルがここまで念入りに役作りしているのだ。『アースクエイクバード』がそれに見合った出来映えだったら良かったのに…。ヴィキャンデルがカメラを趣味にしている小林直己と惹かれ合い、その関係にキーオが入り込んで始まる不穏なストーリー。しばらくしてキーオが失踪、その真相が探られる。おそらく狙ったのはジャパニーズ・ノワールと言ったところだろう。ただ、その気配を出すことに気を取られ、話がちっとも弾まない。

 ヴィキャンデル目線で進む物語は、途中から彼女はもしかしたら正気を失っているのではないかと思わせるのがミソ。死の匂いに付きまとわれ、現実と妄想の境が曖昧になる。小林やキーオも怪しい動きを見せる。罪と癒しがその流れに浮上する。これに吸引力が感じられないのは結局、「事件」と呼べるものがキーオの失踪しかなく、後は退廃的な空間の羅列に終始するからだろう。

 そして、退廃の中心に立つのが小林というわけだ。写真を撮るとき魂を抜かれるという昔の迷信。被写体になった女たちの翳り。体温を感じさせない佇まい。小林は細い目で無表情を貫くことでそれを体現するものの、何と言うか、ただ立っているだけに見えるのが辛いところだ。結末など、結局そのまんまだったのかという感想しか出てこない。ヴィキャンデルに謝罪したい気分だ。





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