2人のローマ教皇

2人のローマ教皇 “The Two Popes”

監督:フェルナンド・メイレレス

出演:ジョナサン・プライス、アンソニー・ホプキンス、フアン・ミヌヒン、
   ルイス・ニェッコ、クリスティーナ・バネガス、マリア・ウセド

評価:★★★




 2012年、当時のローマ教皇ベネディクト16世と彼の後を継ぐホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿(後の教皇フランシス)の会談を描く。そして前者をアンソニー・ホプキンス、後者をジョナサン・プライスが演じると聞けば、誰もがまず思うだろう。何と地味な内容、地味な配役なのだ。失礼ながら、辛気臭い会話劇になるのではないか。

 …が、むしろ『2人のローマ教皇』の全体印象は軽やかなのだ。会話劇であることは間違いないものの、ローマ教皇が主人公だからと言って距離感を感じることも小難しく頭を悩ませることもない。フェルナンド・メイレレスが仕掛ける映画術がことごとくハマったのだ。保守派である教皇(ホプキンス)と改革派である枢機卿(プライス)の対立の構図から、生きるという誰もが抱える普遍的なテーマへ話を膨らませる。

 最初はふたりとも対立姿勢が鮮明だ。教会のスキャンダルに疲弊する教皇が教会への反抗と取られないよう枢機卿の辞任を思い止まらせようとすれば、枢機卿は頑なにそれを拒否する。考え方の違いが浮き彫りになり、溝が深まるかに思われるのに、対話が続けられることで、むしろ溝が消えていく。この流れが美しく見えるのは、メイレレスの語りの確かさと頭でっかちにならない柔軟な演出があればこそだ。

 舞台の作り込みに見入る。会談のために用意された庭園には緑が溢れ、虫の声が止まず、建物はデザイン性たっぷりだ。背景の色は白が基調になり、教皇や枢機卿の服の色合いはそれに溶けるように優しい。ジイサンふたりを捉える撮影はしかし、若者を思わせるようにエネルギッシュで、会話の魂をすくい上げるリズムを知る編集には血が流れている。舞台臭は完全には消えていないものの、若い血の熱さは静かに感じられる。

 はっきりとジイサンなプライスもホプキンスも、メイレレスのこの若い演出を無理なく受け入れる。ゆえに会話内容が重たい内容になっても、それに引きずられることがない。必要なのは壁ではなく橋であり、変わることと妥協することは全く違うのだと、生きる糧となるものを探り当てる。名優ふたりが魅せるのはそこのところだ。互いの距離感を会話を通じて縮める、それを空気感に封じ込める。

 とりわけ印象に残るのは過去の過ちについて互いが語る件だ。枢機卿が独裁政権への向き合い方に後悔を滲ませ、教皇が性的スキャンダルの対処への間違いを認める。そしてその後に訪れる赦し。人は過ちを犯す生き物であり、そして過ちを犯したからこそ見えてくるもの、得られるものも確かにある。新旧ローマ教皇を描きながら浮上するのは、人間はどう生きるべきかという身近なテーマ。分断された世界に生きる我々の身にそれが沁みるのは当然のことではないか。





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