イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり

イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり “The Aeronauts”

監督:トム・ハーパー

出演:フェリシティ・ジョーンズ、エディ・レッドメイン、フィービー・フォックス、
   ヒメーシュ・パテル、レベッカ・フロント、ロバート・グレニスター、
   ヴァンサン・ペレーズ、アン・リード、トム・コートネイ

評価:★★★




 こうして見ると、気球はなかなか面白い形をしている。『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』に出てくるそれは、真ん丸だと思われた球体部分は縦にやや長細く、下に行くに従いぎゅっと絞られる。いちばん膨らんだ胴回り部分からはたくさんのロープが下がり、2メートル×2メートル程度の広さのゴンドラを掴まえる。パッと見、いちじく灌腸型風なのは言いっこなし。ちゃんと美しいしな。

 舞台は1862年のロンドン、気象学者ジェームズ・グレイシャーと気球操縦士アメリア・レンによる高度新記録を叩き出す冒険を描く。ただし、いきなり悪天候に巻き込まれるのを始め、寒さやそれよる機材の不調等、様々なトラブルに襲われる。いかにも映画的に思えるけれど、実はこの冒険、時間にすると2時間に満たない飛行だったりする。相当見せ方を工夫しないといけない。

 最も魅せるのは、寒さにより凍ってしまった気球天辺の開閉部分を開けるべく、アメリアが命綱もなしに気球側面を伝ってよじ登る場面だ。凍傷で身体が思うように動かない中でのアメリアの懸命のアクションがサスペンスと興奮をたっぷり引き出す。演じるフェリシティ・ジョーンズが表現する、ギリギリの気力で奮い立たせる生命力も説得力がある。

 誤算は空と気球の組み合わせが意外に単調に見えることだろうか。空にあるものと言ったら雲ぐらいしかなく、そこから見える景色は雲の上に出てしまうと、「凪」なんて言葉を思い出すくらいだ。加えてゴンドラが狭いのだ。当然主役ふたりの動きは限られる。するとカメラはふたりの上半身を捉えたショットの切り返しが多くなる。画はますます単調になる。先に記したアクションは、アメリアがゴンドラから飛び出してのそれだから、上手く機能したのだ。

 飛行時間が短く、かつ飛行だけでは画に抑揚をつけるのが難しい。…というわけで、主人公ふたりの過去が回想形式で挟まれるのは、飛行のスピードを殺すようで勿体無い部分だ。描かれるエピソードもさほど身を乗り出すような養分は含んでいない。それならば、代わりに気球操縦士や気象学者のエゴについてもっと深く突っ込んでも良かったのではないか。ゴンドラ内部で衝突するそれは、きっとサスペンスのエネルギーになったのではないか。

 ところでこの映画、レンとグレイシャーのラヴストーリーに見えなくもないところが面白い。もちろん史実にも描写にも恋愛を匂わせる部分はちっともないのだけれど(と言うか、アメリアのモデルになった人物は男性の模様)、終わってみると、過酷な状況下で力を合わせるふたりの姿には仄かに愛の気配が感じられるのだ。ジョーンズとエディ・レッドメインの相性が良いことも一因だろうけれど、冒険を形作る成分に愛を光らせるそれがあるのではないか。地上に降り立ったふたりはぼろぼろで、でもきらきら輝いて見える。





ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク