パラサイト 半地下の家族

パラサイト 半地下の家族 “Gisaengchung”

監督:ポン・ジュノ

出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、
   パク・ソダム、イ・ジョンウン、チョン・ジソ、
   チョン・ヒョンジュン、チャン・ヘジン、パク・ソジュン

評価:★★★★




 このところ格差社会の闇を炙り出す作品が続くポン・ジュノ監督はしかし、同じテーマを扱っても似たような世界観にはまるでならない。『パラサイト 半地下の家族』は「スノーピアサー」(13年)のようなSF要素はまるでなく、「オクジャ okja」(17年)風にファンタジーに寄ることもない。極貧家族が金持ち家族の住む豪邸に「寄生」するというプロットこそ単純でも、その味わいはジャンルレス、極めて多角的だ。

 始めは呑気に見ていられるのだ。決して美しいとは言えない界隈、居住空間の半分が地下にある貧乏四人家族が、ひとりずつ大豪邸で暮らす金持ち四人家族の空間に入り込んでいく。身分を偽ったその行為は詐欺には違いないものの、どのメンバーもとぼけた風情、かつ堂々とした立ち居振る舞いなので、嫌な気分にはならず、むしろかなり可笑しい。おそらく「俺だって寄生してぇ」と叫ぶオヤッサンは星の数ほどいるだろう。

 貧乏家族が金持ち家族の生活を乗っ取ってしまうのではないか。素人の浅はかな考えで予想するのだけれど、ポン監督はそんな陳腐な幻想など軽く飛び越える展開を用意する。それは格差というものがいかに身近な存在であるかを掲げるかのような衝撃に満ちている。いや、これだけなら、その物語構造を思いついた時点で終わってしまうか。ポンはそこからさらに創造力と想像力を広げていく。

 その詳細を記すのはルールに反するだろう。ただ、前半何気なく見ていたものが伏線として効いてくるのは間違いない。その上で幽霊や降り続く雨、朝鮮半島の歴史、身体にこびりついた匂い等が意外な角度から光を当てられる。そしてポンは、最終的に再び人間の頭の中へと潜り込む。格差社会の中で上に浮上できないがゆえの哀れが、狂乱のクライマックスへの招待状となる。

 登場人物のいずれも、キャラクターが立っている。序盤は貧乏家族の若い兄妹が活躍、寄生への足掛かりを作る。母親は最もイメージチェンジが楽しい。しかし、最後はやはり、父親が魅せる。演じるのは韓国の名優から世界の名優へとのし上がった感のあるソン・ガンホだ。役柄のたがが外れたときの、一芝居の呼吸、さすがとしか言いようがない。金持ち家族の描写も抜かりがない。とりわけ夫人役の「シンプル」な描写は楽しい。演じるチョ・ヨジョンは美しく、可笑しく、そしてエロティックなのが良い。人妻のいやらしさと言うか何と言うか。

 強烈な登場人物たちの魅力をさらに膨らませる映画術も讃えられるべきだ。とりわけ撮影と美術の素晴らしさよ。カメラは登場人物の心象を表現するのに最も効果的な構図が選ばれる。そして、それに揺さぶりをかけるべくじっくり動き出す。その際、背後に硬質な美しさを讃えた大邸宅の美術を掴まえるのを忘れない。豪邸の中で貧乏家族が動き回る度、画面に可笑しさと寂しさが見え隠れするのだ。とりわけ空間の縦の切り取り方が絶妙。そして映画は怪物になる。





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