ファイティング・ファミリー

ファイティング・ファミリー “Fighting with My Family”

監督:スティーヴン・マーチャント

出演:フローレンス・ピュー、レナ・ヒーディ、ニック・フロスト、
   ジャック・ロウデン、ヴィンス・ヴォーン、ドウェイン・ジョンソン

評価:★★★★




 ワーキングクラスの人々を取り上げた英国映画は多い。バレエを踊ったり歌を奏でたりするのは正統派、ストリップに挑んだりヌードカレンダーを撮ったり一見キワモノ的方向に向かうものもある。そして、大抵は社会の現実が壁として立ち塞がる。ただし、その優れた映画の大半は失っていない。ガッツと誇りというやつだ。

 『ファイティング・ファミリー』もその中に入れて良いだろう。父親は元犯罪者、母親はかつて自殺志願者…のファミリーで身を乗り出すのは、家族全員がプロレスラーという点だ。これで勝算がグッと上がる。お行儀良さが弱点になりがちな英国労働者階級映画に豪快なプロレス技で揺さぶりをかけられるからだ。

 果たして、画が面白い。長男は服役中だけれど、次男と長女が将来有望のレスラーで、のっけから阿吽の呼吸でリング狭しとパワフルな技を連発する。兄が妹に技をかける(或いはその逆)という不可思議な空間に、筋書きがあっても偽りがない。身体を目一杯動かす歓びが溢れ出る。映画と運動の相性の良さを証明する。

 妹が世界最高峰のプロレス団体WWEのトライアウトに合格、舞台をアメリカに移すのも、この手の映画にしては珍しい。ほとんど転調の趣ではないか。どんより曇ったイギリスの空とは全く違う青い空が妹の心をざわつかせる。妹はそこで現実を知る。フローレンス・ピューのゴスなメイクが、一歩間違うと、ここではファッションでしかなくなる。ふくらはぎの感じからして相当鍛えたと思われるピューが見せる強さと弱さが、定番とは言え魅力的。ふたつが衝突、サスペンスを煽る。

 加えて、隠し味以上の効果を上げるのが、妹と同時進行で描かれる兄の物語だ。彼はトライアウトに失敗、早々に夢を絶たれる。哀しい。悔しい。情けない。嫉妬する。そして腐る。…という流れが、妹の栄光とどう合流するのか。この映画において最も美しいところだ。やはり肉体改造したジャック・ロウデンの纏う哀愁が、しみじみと良い。彼は夢半ばで挫折した者たちの分身だ。

 当然のことながらピューは遂にWWEデビューを飾る。がちがちに緊張するものの、徐々に己を解き放っていく様は、分かっていても心躍る。ここまで来るのに色々あった彼女の戦う原動力は、やはり家族にあったというのが英国映画らしい。ここではその旅路で出会った人々の顔も思い出される。厳しさと優しさが同居するコーチ。憧れのスター選手。故郷の子どもたち。イメージが逆転する仲間たち。そう、彼らもファミリーだ。たとえ臭くても、そう信じさせてくれる。夢の純度が勝利するということだ。





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