ドクター・スリープ

ドクター・スリープ “Doctor Sleep”

監督:マイク・フラナガン

出演:ユアン・マクレガー、レベッカ・ファーガソン、カイリー・カラン、
   クリフ・カーティス、カール・ランブリー、ザーン・マクラーノン、
   エミリー・アリン・リンド、ブルース・グリーンウッド、
   ジョスリン・ドナヒュー、アレックス・エッソー

評価:★★★




 スタンリー・キューブリックの「シャイニング」(80年)からもう40年近く経つのか。多くの人にとってそのイメージはおそらく、ジャック・ニコルソンが割れたドアの隙間から狂気の表情を覗かせる、あのショットになるだろう。続編と位置づけられる『ドクター・スリープ』ではユアン・マクレガーが同じショットに挑む。ただし、それに囚われた印象はない。正解だ。

 原作にどれだけ近づけているのかは分からないものの、少なくともマイク・フラナガン監督は「シャイニング」の亡霊にとり憑かれることなく物語を創り上げる。惨劇を生き延び中年になったダニー。ダニー以上の超能力を持つ少女アブラ。超能力を持つ幼い命を狙う謎の集団。並行して三つの物語が語られ、彼らはあの忌まわしき“飢えた建物”オーヴァールック・ホテルに吸い寄せられていく。

 登場人物の大半はダニーがシャイニングと呼ぶ超能力の持ち主で、彼らが生み出すアクションやサスペンスは当然、シャイニング絡みのものになる。それはまるでコミックブック原作の映画のようで(最も近いのは「X-MEN」シリーズか)、VIDEOゲームを思わせる場面すらある。つまり、人間の心の闇を抉り出すような恐怖には乏しい。

 …それにも拘らず、時に前のめりになるのは、登場人物それぞれの役割が明確であること、そして短くない上映時間を飽きさせない物語構造になっているからだ。じっくり丁寧に語られた分、ダニーとアブラが遂に繋がる場面にはカタルシスが宿り、孤独を知る者同士の掛け合いにはハートの体温が上昇する。ふたりの心の宇宙(特にダニー)のイメージが「シャイニング」へのラヴレターのように撮られているのも悪くない。

 しかし、もっと興奮するのは遂にダニーがアブラと共に呪われたホテルに帰る瞬間だ。そして、謎の集団のボス、ローズ・ザ・ハットと対決する瞬間だ。そうか、結局この物語の主人公はこのホテルなのだ。孤独な魂を惑わし、彼らの動揺を眺めては笑みを浮かべている。ホテルはきっと、己の運命にも気づいている。それでもなお、余裕の表情を崩さない。この妖気には結局、抗えない。

 クライマックスの対決場面は作り手の頭の捻り所だ。映画「シャイニング」への強烈な憧憬とスティーヴン・キングの世界観への敬意が衝突することなく、美しく溶け合うのだ。懐かしさと新しさが同時に立ち上がり、登場人物たちの運命はその渦に巻き込まれていく。映像と物語が機能する映画らしい画が目に焼きつく。





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