プライベート・ライフ

プライベート・ライフ “Private Life”

監督:タマラ・ジェンキンス

出演:ポール・ジャマッティ、キャスリン・ハーン、ケイリー・カーター、
   モリー・シャノン、ジョン・キャロル・リンチ、デニス・オヘア、
   デスミン・ボルヘス、エミリー・ロビンソン

評価:★★★★




 主人公の四十代夫婦は不妊治療に励む。シヴィアな問題であり、それにまつわる現実が残酷に突きつけられる。夫婦の心は激しく揺さぶられる。当事者の方々が観たら気分が滅入るところも多いと察する。それでも『プライベート・ライフ』には勝算がある。夫婦を演じるのがポール・ジャマッティとキャスリン・ハーンだからだ。

 夫が妻の尻に注射を打つ日々。巨額の治療費。狭くなる選択肢。枯渇に近づく心の湖。不妊治療は決して楽しいものではなく、大半の場面でジャマッティとハーンが見せるのは「忍耐」になる。そしてそこに様々な感情を忍ばせる。ただし、決して一面的ではない。彼らの姿を眺めていると、可笑しいのにどうしようもなく切なくて、哀しいのに時折吹き出すのを堪えられない。

 夫婦は何度も衝突する。この際、観客がどちらかに過剰に肩入れするような演出は避けられる。どちらの気持ちも分かる。憎み合っているなら事は簡単だ。愛し合っていることが分かるから動揺を覚えるのだ。問題に真摯に向き合い、それでも現実が次々立ちはだかり、それゆえにほんのちょっと互いへの思いやりを忘れてしまうことがある。それを誰が責められよう。とりわけハーンは難しい演技が求められる。妻の剥き出しの叫びを決してヒステリックに見せないのが、さすが名喜劇女優だ。

 打つ手が少なくなる中、夫婦が倫理的に迷いながらも決断するのが「卵子提供」を受けた上での「体外受精」だ。この際、卵子提供を買って出る若い娘(血の繋がらない、夫の姪)の描写が巧い。決してお行儀が良い娘ではない。けれど、温かなハートを持っている。意外や知性もある。彼女は夫婦に卵子を提供するだけの存在なのだろうか。答えは断じて、否。

 彼女が夫婦にもたらすのは希望だけではない。若く溌剌としたその身体は「性」というものを思い出させるし、そのあっけらかんとした言動は人生のカンフル剤になる。簡単に言えば、心の豊かさを届けるのだ。ケイリー・カーターが体現する、現代っ子的佇まいと心のこもった演技のコンビネーションが強力だ。

 映画は最後まで現実を忘れない。登場人物は本音を隠さない。どこまでも映画的には転がらない。そうしてジャマッティが呟く「人生が欲しい」という言葉の重みにぎくりとする。あぁ、本当に大切なものは何なのか、考えさせられる。そうした境地を経て辿り着くラストシーン。エンドクレジットに被さりながらのその画がとても良い。ジャマッティとハーンの重なる手から目が離せない。ふたりは人生を手にしたのだろうか。それともこれから手にするのだろうか。ふたりの幸せを願わずにはいられない。





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