トリプル・フロンティア

トリプル・フロンティア “Triple Frontier”

監督:J・C・チャンダー

出演:ベン・アフレック、オスカー・アイザック、チャーリー・ハナム、
   ギャレット・ヘドランド、ペドロ・パスカル、アドリア・アルホナ、
   レイ・ガジェゴス、シェイラ・ヴァンド

評価:★★★




 極めて乱暴にまとめると、『トリプル・フロンティア』はかつてアメリカ陸軍特殊部隊に所属していた五人の男たちが麻薬王の金を頂戴しようとする話だ。思い出す映画はたくさんある。ミッション物ゆえ「オーシャンズ11」(01年)っぽくもあるし、もっと大甘に見るなら「七人の侍」(54年)の気配もある。ただ、結局は「エクスペンダプルズ」(10年)が近いだろうか。脳ミソ筋肉俳優は出てこないけど…。

 五人のオッサンの描き分けはもっと慎重にして欲しい。リーダー格のベン・アフレック以外はその人物像がほとんど見えてこない。話を持ち込むオスカー・アイザック、兄弟参加のチャーリー・ハナムとギャレット・ヘドランド、パイロットの腕が買われるペドロ・パスカル。彼らが計画を実行に移すまでに必要以上に時間が割かれているのに(手際はよろしくない)、どういうことか。ここがピリリとしていないと、後半のアクションの盛り上がりに影響する。

 第二幕と言うべき麻薬王の邸宅に乗り込む件は、実にあっさりしたものだ。そんなにあっさり侵入できるのかと拍子抜けするほどで、案の定人物の描き込み不足はそれぞれの役割分担をはっきりさせない。せめて麻薬王との対決はもっと凝ることができなかったか。タメというものが全くなく、麻薬王にボスの重み、まるでなし。ただし、この件では人格者に近いと思われたアフレックが強欲さを露わにする重要ポイントがある。密林に降り注ぐ雨や燃える家のイメージも悪くない。

 …とそう、この映画は大金を奪うまでの話ではない。むしろそこからが面白いところで、強欲を発端に計画がどんどん崩れていくサヴァイヴァル劇の様相を呈していく。もはや「エクスペンダプルズ」の匂いは綺麗に消え去り、「ファーゴ」(96年)や「シンプル・プラン」(98年)を思い出す人も多いのではないか。金を奪い過ぎたばかりにヘリコプターの重量問題が発生。不時着した先では住人との抗争勃発。生きるためには金を燃やし、谷底に金を捨てなければならない。

 本来格好良く撮られてもおかしくない男たちが情けなく見えてくるところがミソだ。この際の画に見入る。鬱蒼と木が生い茂るジャングル。首まで深さのある川。岩ばかりの山岳。あと一歩で滑落しそうな絶壁。光の届かない洞窟。目指す海までの道中で、男たちは仲違いや死に直面、アンチヒーローの匂いを運命にもがく哀れな者たちへとその姿を変えていく。ユーモアが決定的に不足しているのはいただけないものの、最低限の皮肉とスリルはある。

 かつて苦難を共にした男たち間に流れるものに関しては大いに不満だ。せっかくそれぞれが本音を吐き散らす展開に雪崩れ込んでいくのに、ある人物の死をきっかけに再び結束するというのが、あぁ、嘘臭い。金の行方に関しても、どいつもこいつも何故正義感ぶっているのだ。ラストのメモに書かれた言葉が続編への目配せ以上の意味を感じさせないのが寂しい。そこには決して果てることのない欲望の闇が見えなければならないはずなのだ。





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