ソウル・キッチン

ソウル・キッチン “Soul Kitchen”

監督:ファティ・アキン

出演:アダム・ボウスドウコス、モーリッツ・ブライプトロイ、
   ビロル・ユーネル、ウド・キアー、アンナ・ベデルケ、
   フェリーネ・ロッガン、ルーカス・グレゴロヴィチ、ドルカ・グリルシュ

評価:★★★★




 ファティ・アキンというと民族的ルーツを根底に、装飾のないまっさらな愛を凄味たっぷりに描いてきたトルコ系ドイツ人監督。その映画話術に小難しさはないものの、テーマとの向き合い方が酷く誠実ゆえに、シリアスに語られがちだったかもしれない。ただ、案の定と言うべきか、ファキンはそんな枠に収めることのできる小さな作家ではなかった。本人も真面目な作風が続いて疲れていたのか、これまでとはドラマとコメディの割合を逆転させて、まるっきりの喜劇を撮り上げてみせた。『ソウル・キッチン』、肩の力が愉快に抜けた、美味しい佳作。

 主人公は所謂大衆レストラン(兼ライヴハウス?)を経営している。当然人物の出し入れの大半はレストランになるのだけれど、ここでの人物の捌き方が実に気持ち良い。カメラも適度に動いているものの(回り込み方に芸あり)、それよりも人物を軽やかに動かす。背景に人物が徐々に入り込んできたり、一瞬フレームアウトさせた人物を再び呼び戻したり、そのリズムがコメディのリズムに大きく貢献していく。アキンはおそらく、感覚としてそれを会得している。

 流れる音楽のジャンルが意外なほどヴァラエティに富んでいるのが可笑しい。まるでボウリング場のジュークボックスを流しているように、ロックにヒップホップ、R&Bにディスコミュージック、そしてもちろんソウルミュージックが次から次へ。雑食的な選曲。それがそのまま高級レストランなんかとは違う大衆レストランの味にも繋がる。

 主人公のジノスを演じるアダム・ボウスドウコスが役柄にピッタリ。まるで80年代ロッカーのようなヘアスタイル、中年太りが入ってきた体型、動物のような瞳。彼がさほど「深刻に思い悩む」ことなく悩む様に愛敬がある。序盤に描かれる調理場面の大雑把さ(なんと冷凍食品をそのまま客に出す。盛り付け方も適当)も憎めないし、兄役のモーリッツ・ブライプトロイとの掛け合いもユーモラス。直球の愛も愛らしいと言って良い。

 主人公がこれだけ吸引力を持っているせいか、周りもそれに続くかのように楽しく跳ねている。仮出所中のダメ兄も、酔っ払うと手がつけられないウエイトレスも、腕は一流だが扱い辛いシェフも、計算高い不動産屋も、頭の固い税務署職員も…。アキンの優しい視線は彼らに平等に注がれ、それぞれが物語の中で逞しく息をしているのが、いちばんの魅力だろう。

 遂にレストランを手放してしまってからの大逆転劇には心躍る。それまでの伏線がさり気なく回収され、ハッピーエンドに向かって突進する。ほとんどご都合主義かもしれない。でもいいのだ。そこにはちゃんと愛がある。大衆レストランはこうでなくてはと膝を打つ。





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