ジェミニマン

ジェミニマン “Gemini Man”

監督:アン・リー

出演:ウィル・スミス、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、
   クライヴ・オーウェン、ベネディクト・ウォン、リンダ・エモンド、
   セオドラ・ミラン、ダグラス・ホッジ

評価:★★




 「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(08年)で20歳近く若返ったブラッド・ピットには本当に驚いた。人の若さと老いがはっきり表れるのは肌の質感だ。しわとたるみは現実を残酷に突きつける。ピットはこの二点を完璧に克服、その容姿は神がかり的に美しかった。俳優の顔の修正は多くの映画で既に知らず知らずのうちになされていることだろう。ただ、いよいよそれが当たり前のものとなる日が来た。『ジェミニマン』の登場だ。コンピュータ技術により俳優が若返り、それこそを売りにする。

 若返るのはスミスで、何故若返る必要があるのかと言うと、スミスのクローンが作られ(20代)、現在のスミス(50代)と対決するのだ。スミスは二役を演じ分けるわけだけれど、メイクの力を借りたり肉体改造したりすることなく、編集室の中で若返りを図る。越えてはいけない一線を越えてしまったような思いを抱くのは、「ベンジャミン・バトン」のときと同じ。

 果たして、若スミスは実に初々しい。スミスは発声も変えているようだけれど、やはり見た目のインパクトが強烈。「私に近い6人の他人」(92年)頃のスミス、いや、ザ・フレッシュ・プリンス時代のスミスを思わせ、なるほど全然老けないと思っていたスミスも、着実に老いていることを知らしめる。爺スミスはメイクもあるのだろうけれど、額のしわや白い髭に味があり、全くマイナスではないものの、若さがもたらす眩しさは抗い難い。

 ただ、アン・リーがデザインする若スミスと爺スミスの対決は大いに不満だ(そう、リーが意外や監督なのだ)。若スミスの武器である若さと、爺スミスの武器である経験と知恵。これが対立するところにアクションの面白さがあるわけだけれど、衝突するのは序盤の戦いのみで(まだ若スミスの正体がはっきりしない最初の対決は、若スミスの動きがパルクール風なのにわくわく)、それ以後は若スミスと爺スミスの心理状態に重きを置いた画が並ぶ。

 もっと簡単に言うと、若スミスと爺スミスのクローン関係の中に、父と息子のそれに通じる気配を落とし込む。そう、割り切れないままに始まる若スミスと爺スミスの交流劇へと転じていくのだ。見たいのは二大スミスの本気のバトルだろうに、お互いの境遇に想いを馳せるふたりは、アッという間に敵味方の立ち位置を壊してしまうのだ。そして団結して真の敵の元へ…って、いやホント、見たいのはそれじゃないから。

 要するに、若スミスも爺スミスもどっちも良い奴なのだ。暗殺者として生きながら、けれどそれは崇高な使命の下に誇り高く行われてきたという設定。決して冷酷なわけでも悪の心に支配されているわけでもない。思いやりあるクールな男、それがウィル・スミスなのだ。…って、ひょっとしてスミスの良いイメージを壊したくないがための展開なのか。そうなのか。どうなんだ。せっかくいつもとは違う一面を見せられるチャンスだったのに、スミスよ、しくじってくれるな。そう言えばスミス、「スーサイド・スクワッド」(16年)で悪役を演じながら、結局悪に徹し切れない前科があったんだっけ?…とまあ、突っ込みながら楽しむのが正解の映画だ。





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