バスターのバラード

バスターのバラード “The Ballad of Buster Scruggs”

監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン

出演:ティム・ブレイク・ネルソン、ウィリー・ワトソン、クランシー・ブラウン、
   ダニー・マッカーシー、デヴィッド・クラムホルツ、ティム・デザーン、
   E・E・ベル、アレハンドロ・パティーノ、トム・プロクター、
   マシュー・ウィリグ、ジェームズ・フランコ、スティーヴン・ルート、
   ラルフ・アイネソン、ジェシー・ルケン、リーアム・ニーソン、
   ハリー・メリング、ポール・レイ、トム・ウェイツ、ビル・ヘック、
   ゾーイ・カザン、グレインジャー・ハインズ、ジェファーソン・メイズ、
   ドリス・ハーグレイヴ、ジョンジョ・オニール、ブレンダン・グリーソン、
   ソウル・ルビネック、タイン・デイリー、チェルシー・ロス

評価:★★★★




 オムニバス映画『バスターのバラード』には六つの短編が収められている。西部開拓時代を背景にしているという共通点はあるものの、それぞれ全くテイストが違う。それなのにどれもこれも兄弟印が強く焼きつけられ、それに気づく度、「コーエン兄弟!」と叫びたくなる。いかに兄弟がジャンルに囚われないままに映画を自分たちの色に染め上げてきたか、その証と言える。

 ティム・ブレイク・ネルソンの歌声が聞こえてくる一話目から絶好調。己をサンサバの歌人と名乗るカウボーイ役のネルソンは、その風貌だけで目を釘づけにする。ジャケット、テンガロンハット、ブーツと全てを白で揃え、白馬に乗る徹底ぶり。陽気なバリトンヴォイスは砂埃舞う西部の景色に気持ち良く響き、気を良くした彼は観客に話しかける。人懐っこいその佇まいはしかし、油断していると、意表を突く変態を見せる。

 短編の中でもかなり短い一話目だけで、ここまで高揚を誘うとはコーエン兄弟はやはりタダモノではない。彼らの映画を観ていると「次は何で驚かせてくれる?」と無意識に画面に問い掛けている自分に気づくことが多いのだけれど、この短編集などまさにそれ。どこに向かっているのか、何が待ち受けているのかさっぱり分からないまま、しかし気がつけばコーエンワールドに迷い込んでいるのだから。

 六つの短編は全く設定が異なりながら、一貫して人生の不条理と密着したユーモアが感じられる。いかにもコーエン兄弟だ。ネルソンは「永遠には勝ち抜けない」とぼやき、ジェームズ・フランコは首に縄をかけられながら娘に恋をする。四肢のない男はリーアム・ニーソンが鶏の世話をするのを見て諦観し、トム・ウェイツは欲望と執念に塗れた自分を愛する。ゾーイ・カザンは僅か数秒を堪えられず絶望を勘違いし、ブレンダン・グリーソンとジョンジョ・オニールは笑いながら死体を運ぶ。

 これまでのコーエン兄弟映画好きなら、まず間違いなくどの話も気に入るだろう。ただ、コーエン兄弟のどの作品を好きかで好みは別れてくるのかもしれない。喜劇好きなら一話目だろうし、物語の楽しさを追いかけるなら五話目がベストか。ダークさと詩情を愛するなら三話目がイイ。…という具合に。いやホント、コーエン兄弟ほどどのジャンルも起用にハマる作家も珍しい。

 もし長編が作られるとするなら、やっぱりネルソンのキャラクターがサイコーだった一話目を推したい。ユニークなアクションやセリフがぽんぽん飛び出しそうじゃないか。四話目でウェイツが扮したパワフルジジイの過去を描いても面白そう。絶対に一筋縄では行かない人生を送っているはずだ。何が飛び出すか分からないびっくり箱的楽しさを改めて宣言するコーエン兄弟短編集。それぞれは短くても六度訪れる快感を逃す手はない。





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