胸の痛み

 3月。卒業シーズン。この時期になると毎年、胸にチクチクと小さな痛みを感じる。中学一年生の頃を思い出して。

 中学に入って初めて担任となったのは、まだ20代前半、教師に成り立てのワタナベ先生(♂。国語担当)だった。小学生の頃は男の先生の方がいいなぁと思っていたけれど(もちろん面白そうだから)、中学生にもなると女の先生を希望してしまう。できれば若い先生。理由は言わずもがな。だから男であるワタナベ先生が担任だと分かったときには、ちょっとだけガクッとした。まあ、若い女の先生は他にほとんどいなかったので、仕方がなかったのだけど。

 基本的に教師受けが良い生徒ではあったのだけど(教師に好かれるツボを悟っていたのだ。なんて嫌な子ども!)、ワタナベ先生はかなり買ってくれていた方で、学校やクラスでの重要な役目を次々任されたことを思い出す。あの頃のパワーというのは今より何倍も漲っていて、目の前にある課題を次々とこなしていくことが快感だった。だからそうやって頼られることは、時に面倒臭いこともあったものの、基本的には楽しいことでもあったのだ。踏ん張ればなんとかなる、そううっすら感じたのもこの頃のような気がする。一年を通して忙しくしていたので、周りから「なんでそんなに頑張るのか」と言われたこともあったけれど、それがちゃんと自分に返ってくるのが嬉しかった。今思えばその土台を作ってくれたのはワタナベ先生だった。

 一年はアッという間に過ぎた。充実していたと言えるだろう。それなのになんと、一年の締め括りとなる終業式の日に、風邪をひいて学校を休んでしまったのだった。でもまあ、終業式は寒い体育館で校長の長話を聞いて、変わり映えしない通知表を貰うだけだし、特に大役も任されていないし、別に卒業して皆と別れるわけではないし、良かった良かった。…とそのときは思った。

 春休みに入って部活動で学校に行ったとき、職員室でワタナベ先生に会った。そのとき先生は笑いながら言ったのだ。「何か俺に言うことない?」。バカだった自分は何のことだかさっぱり分からず、ただきょとんとすることしかできなかった。そして中学を卒業するまでずっと、先生が何故そんなことを言ったのか、思い当たらないままだった。

 先生は別に無理矢理一年間のお礼を言わせたかったわけではないだろう。感謝を強要するような人ではなかったし、人間的にも優れていたと思う。ただ、なんとなく言った一言だったはずだ。でもそれが今もまだ、胸に引っ掛かっている。そして時々、胸をチクッと刺す。「ありがとうございました」というシンプルな言葉がどうしてあのとき言えなかったのだろう。中一の自分よ、大いに反省するが良い。

 だからいつかワタナベ先生に会うことがあったら、真っ先に「あのときはありがとうございました」と言いたい。この胸の小さな痛みがある限り、それを忘れることはないだろう。先生は忘れているだろうけれど…。

 …なんてことを考えていたら先日、とんでもないニュースを聞いた。ワタナベ先生、なんと今、母校の小学校で校長を務めているというのだ。ひぇぇぇぇぇ、優秀だとは知っていたけれど(なんせ他の先生たちがワタナベ先生は優秀だ。君たちは彼が担任でラッキーだと連呼していたのだ)、まさか校長に上り詰めるとは!

 関係ないが、教師には恵まれた方だったと思う(例外はあるけれど)。中でも小学3年生のときのオバラ先生、小学6年生のときのアサイ先生、中学2、3年生のときのクノ先生、そしてワタナベ先生あたりは、今でも強烈に胸に残っている。全員尊敬できる方たちだった。先生方、元気にしていますか?同窓会というヤツは苦手だけれど、先生方にはたまに会いたくなるのだった。





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